青梅市西分町の青梅織物工業協同組合にある、昭和初期の建物。
ここを、
映画館に生まれ変わらせるというプロジェクトが3年前にスタート
しました

映画館プロジェクトを発案し、
改修工事を進めてきたのが
株式会社チャスの菊池さんです。
菊池さんは焼き鳥店などを青梅市内に4店舗持ち経営する社長さん
で、経営歴は10年になりますが、
ご自身も今もお店に出続けています。
そんな菊池さんは霞台小、泉中の出身。
小学校の卒業文集には、将来の夢の職業に
「役者」と書いていました。
念願の役者デビューを飾ったのは17年前、
菊池さんが22歳の時です。
あの
蜷川幸雄さんの作品「ロミオとジュリエット」
が初舞台となり、地元の新聞で夢を語りました。
世界の蜷川のもとで舞台に立つことができたのは、
何と言っても
菊池さんの持ち前の決断力と行動力があったからです
。
実は菊池さん、
オーディションで一度落とされてしまったそうですが、
落とされた理由に納得がいかずに蜷川さんに直談判し、
その熱意が伝わって合格したそうです!
本当にすごい行動力ですよね。
そんな菊池さんが役者を志していた当時、青梅の街は
「映画看板の街」というフレーズが定着し始めていました。
街のあちこちに飾られた映画看板は、
かつて青梅の映画館で看板絵師として活躍されていた、
久保板観さんの作品たちです。
菊池さんは蜷川さんの舞台に出た後、俳優さんの付き人や、
NHKの大河ドラマへの出演などの経験を経て…
29歳の時に、きっぱりと役者の道から身を引きました。
当時、役者の仕事だけで食べていくことは難しく、
生計を立てるために焼き鳥店でアルバイトをしていた菊池さん。
その仕事にエンタメを見出したことが現在の焼き鳥店経営に繋がっ
ていきます。
さらに焼き鳥店だけではなく、
何かしらエンタメに関わることがしたいと菊池さんは考えました。
そして今度は、役者として出演するのではなく放映する側へ…
映画館を作るという考えに辿り着きます。
こうして始まった映画館プロジェクト。
その菊池さんをサポートしてきたのが、
タウンマネージャーの國広さんです。
タウンマネージャーは空き店舗対策やイベント企画、
駅前再開発など、
「街づくり」をすることがお仕事です。
映画館作りの話を初めて聞いたのは8年前。
國広さんは、青梅織物工業協同組合の建物を紹介しました。
それは青梅織物工業協同組合が管理している3000坪もある広大
な敷地内にある建物で、
織物の街として栄えた伝統を現在に紡ぎ続けている場所でもありま
す。
この敷地内にある4軒の建物は、
国登録有形文化財という貴重なもの。
そのうちの一つ、昭和初期に建てられた
旧東京都立繊維試験場を、
映画館に生まれ変わらせることにしたのです。
水色の可愛らしいこの建物には、
「BOX KI・O・KU」(ボックス キオク)の愛称がありました。
その名の通り、この建物には青梅の記憶が眠っています。
青梅を一大織物生産地にしたのが、布団生地として知られる
「青梅夜具地」でした。
戦後から10年間は全盛期となり、
この青梅織物工業協同組合の土地には人が溢れとても賑やかだった
そうです。
そんな夜具地の最盛期に合わせるように存在していたのが、
青梅の映画館でした。
当時は最大の娯楽であった映画…街は賑わい、
青梅市内だけでも3軒もの映画館がありました。
現在はその全てが廃館となっています。
今回のプロジェクトで作られる映画館は、
青梅にとっては実に50年ぶりの復活となるのです!
これは…
当時を知る方にとっても胸が熱くなるプロジェクトではないでしょ
うか。
菊池さんは、青梅の街が作り上げてきた
「昭和レトロ」や
「ネコ」といったイメージも取り入れて、映画館の名前を
「CINEMA NEKO」(シネマネコ)としました。
菊池さんの会社、チャスが映画館の運営・経営をしていきます。
本格的な改修工事は2020年の秋から始まりました。
今回映画館になる建物である国登録有形文化財は、
改修にあたっては外観を維持することが条件とされています。
外観はそのままに、映画館としての耐震補強もし、
内装はもともとの木造建築の趣を活かして、
そこに新たなデザインを取り入れていきます。
天井を抜いて剥き出しとなった梁や、
漆喰壁のベースになっていた板など、
昭和初期に使われていた材料が再利用され、
サスティナブルデザインに生まれ変わっていく映画館。
さらに縦長の大きな窓を活かした、
明るいブックカフェも併設され…昔懐かしいのに新しい、
印象的でオシャレな空間になりました。
映画館という名前がつく以上、菊池さんは半端なものは作りたくありませんでした。だから費用も嵩んでいきます。国からの助成金も活用していきますが、それでも完成するまでにはおよそ1億円もの費用がかかったそうです。街全体の協力や理解を得られなければ、実現できそうにない金額ですよね…それでも2021年3月下旬には客席やスクリーン、
照明など設置され、
4月中旬には試写上映ができるまでに設備が整いました。
上映環境も最新の設備、DCPデジタルシネマパッケージの高画質
で、音響は7.
1チャンネルドルビーサラウンド対応の立体音響という、
大規模シネコン同等のものを取り揃えてあります。
席数は63席で、前後に傾斜角をつけることで全ての席からスクリーンが見やすいように配置されています。素敵な青梅ブルーの色が印象的な椅子たちですが、実はこの椅子は、新潟県十日町というところにあった映画館、シネマパラダイスで使われていたものなんです。映画文化を大切にしてきたシネマパラダイス。2018年に閉館してしまったのですが、その想いが詰まった椅子を、偶然とも運命とも言えるようなご縁があって、菊池さんが譲り受けることになりました。映画館に入った瞬間に目に飛び込んでくるズラリと並ぶ青い椅子たち…グッとくるものがあります。こうして出来上がった、東京で唯一の木造建築の映画館となるシネマネコ。何を上映するのか、菊池さんの想いは募っていきました。そこで思い至ったのが、菊池さん自身が映画館で号泣したというジブリ作品を上映することでした。しかし、一映画館がスタジオジブリの作品を単独で上映できる前例は今までにありませんでした。そこで菊池さんは今年の2月に、スタジオジブリのアニメーション作家である宮崎駿監督宛にジブリ作品上映への熱い思いを書き綴り、その結果なんと、シネマネコで上映できることが決まったのです!
柿落としとして上映されるのは、シネマネコのネコにちなんだジブリ作品「猫の恩返し」です
4月23日にはプレオープンとして完成式典が執り行われ、青梅市長をはじめたくさんの方々がお祝いに駆けつけました。本来であれば5月2日にオープンする予定だったシネマネコですが、4月25日に緊急事態宣言が発令されオープンは見合わせることに…ですが、あの映画館に人が入って映画が上映される日が来ることを思うと…50年ぶりの青梅映画館復活劇、
オープンの日が本当に待ち遠しいですね!

今後の予定は決まり次第、
シネマネコのSNSやホームページなどでお知らせしていくとのこ
と。
もちろん西多摩マルかじりでも追っていきますので、
みなさんもどうかその日が来るまで楽しみに待ちましょう!
(2021年5月現在の情報です)======================
CINEMANEKO(シネマネコ)
青梅市西分町3-123青梅織物工業協同組合
地図
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