孤老の仕事部屋

家族と離れ、東京の森林と都会の交差点、福が生まれるまちの仕事部屋からの発信です。コミュニケーションのためのコピーを思いつくまま、あるいは、いままでの仕事をご紹介しましょう。
 
2008/08/26 15:49:19|エッセイ・日々是好日
風の音にぞ
●風の音にぞ 2008.09.01(月)

身分証明
視力の低下と顔覚えの悪さを自覚

 昔からそうですが、どうも人さまの顔と名前をなかなか覚えられません。一度だけ、わずかな時間に会った人を、ぱっと記憶してしまう人は、私から見れば天才です。尊敬する前に、畏れ入ってひれ伏してしまいそうです。人の顔と名前を覚えられる能力は、組織のトップには必須の能力なのでしょうね。昨日も防災訓練の会場で、鈴木市長さんの方から、先に「やあ、いつもご苦労様」と声をかけてもらい、いたく恐縮してしまいました。私には到底かなわない能力のひとつです。覚えられない代わり、覚えられやすいように灰ゴマヒゲを生やしているわけです。
 
 さらに、極端に視力が落ちていることもあります。老齢に加え、両目の手術をした後は、新聞は見出しを読むだけで、本文は、特に必要な記事しか読みません。シニアグラスは勿論、天眼鏡は必需品で、100円で買ったものを何本も所有し、家中に、また、カバンやバッグに入れてあります。この前は、とうとう通販で「ペアルーペ」という、手で持たなくても、眼鏡感覚で使える天眼鏡を買ってしまいました。100均ショップのシニアグラスの100倍もの値段でした。で、少しは見ることが楽になったかというと、それでも、若い頃の健康なときの視力の半分以下です。
 
 老齢者の運転免許証の自主返還が勧められています。なんとインセンティブまでついています。私の場合、返還する前に、とうてい更新できない視力だと分かっていましたから、試験場で泣く前に、思いきって免許更新を諦めました。40年近くお世話になったのですが、涙をのんでの分かれです。免許証は、身分証明用に便利というだけではなく、山の取材など、仕事にも欠かせないものでした。いまでは市が発行してくれた住基台帳カードを証明用に持っていますが、これではミニバイクにも乗れません。それに、年齢証明が必要なときってそうそうないものですね。
 
 文字を紙に書くという作業も、まるでしなくなりました。手が思うように使えず、みみずがのたくったような字になってしまいます。かつてはきれいで上手ではなかったのですが、早く書ける独自の、マイフォントを持っていました。一日に、600字詰め原稿用紙で100枚近く書いていた時代もありました。原稿を目方で売っていた時代です。ワープロ、パソコンになってからは、ペンだこはなくなりましたが、漢字を忘れ、字は下手くそになってしまいました。しかし、いまは文字を大きくして書けるこの筆記具は、私の仕事に欠かせない相棒になっています。
 
 
●風の音にぞ 2008.08.31(日)

想像努力
訓練で試されるそのときの実践力

 想像力の枯渇は、プランナーにとって致命傷になりかねません。かつて弟子や事務所の若い人たちに、クリエイティブは観察、想像、創造の過程を経て実現する。創造につながる想像力を絶えず鍛えておくようにと、ことあるごとに、偉そうに話していました。その想像力が枯渇とまではいかなくても、ちょっと鈍ってきたかなと、恐くなった私であります。今日、朝から、福祉センターで総合防災訓練があり「災害ボランティアセンター開設運営訓練」に参加しました。頭上訓練に毛の生えたようなもので、社協担当者の想像で組まれたプログラムでの演習でした。
 
 災害時に、社協の福祉センターオフィスにボランティアセンターを設置して、ボランティアの受け入れと、被災者からの要望に合せた派遣を行おうというものです。これはどこのどんな被災地でも、欠かすことのできない活動でしょう。どこかでコントロールしないと、復旧や生活がとんでもないことになってしまいます。このコントロールを、行政の一端である社協が担おうというもので、市としては始めての取組みだとか。今日は、いわゆるロールプレーイングで、参加者はセンタースタッフとボランティアに、役を振っての訓練です。私の役はボランティアでした。
 
 まず、センター受付にボランティア登録をして、被災者からの派遣要請を待ちます。要請を受けたスタッフは、登録ボランティアから適任者を選んで、その被災者のもとに派遣させるという段取りです。これを登録用紙や派遣指示書、結果報告書といった書類に記入しながら、模擬活動を行います。この流れは、一応、理にかなった型どおりのやり方でしょう。その流れで演習をしたわけです。結果、いろいろな問題点が見えてきました。一通り終えた後で反省会。参加者は、それぞれ意見を出し合います。全くその通りの意見で、詰めの甘さが指摘されます。
 
 そして、我らが災害ボランティアの達人、TSさんの講評です。実際には、すぐには被災者からのボランティア要請は少なく、善意のボランティアは増え続けて、無為のまま待機するだけで、終始がつかなくなると。被災者からの要請はなかなかこない。これは想定内のことです。しかし、ボランティアが増え続けるということは、想定外のことでした。これを読み切れない私の想像力が至らないというわけです。昨今、変わってきているとはいえ、日本人をしっかり観察していれば、善意での無償の行為を目指す優しい心根は、想像できたはずでした。想像努力不足です。

 
●風の音にぞ 2008.08.30(土)

エコの家
東京の木でストックの家造り活動

 仲間が主催する「東京の木で家を造る会」の家づくり勉強会に参加しました。この会は荒廃している東京の森林の元気を甦らせるために、コーディネーターの事務局のもとに東京の林家、製材所、工務店、設計者が手を結んで共同組合をつくり、消費者とお互いが顔の見える関係のもとに、東京の木を使って家づくりをしていこうというグループです。地元産の木材での家づくり活動は、全国各地で行われています。しかし、十年以上の歴史と、百棟をこえる実績をもつこの会は、このような活動の先駆けであり、大勢力にはならないものの、着実に実績をつくっています。
 
 会では、年6回の勉強会と行事を行っています。今回のテーマは「木の家の予算配分・コストの考え方」で、会員の消費者と組合員の学習会で、日頃、組合の分科会での研究、検討の一部を発表したものでした。内容はそのうちに確認してみます。家は、できてしまえばどんな材料を使い、どのような使い方をしてつくられたのか、外観では判断できません。建築の知識が少ない一般消費者にとっては、ブランドやデザインや住宅設備器機に目が行き、肝心の造り方には目を向けたくても、情報が少なく、具体的に知る機会も少ないことから、検討のしようもありません。
 
 建ちあがってしまえば、どんな家でも30〜40年はもつでしょう。子育てが終って子らが巣立つまでの期間に住めればよいとして、高齢化が進んでいるいまは各所に空の巣が多くなっています。とくに、建坪の小さい家が並ぶ住宅地に多くなっているようです。老夫婦二人だけ、あるいは連れ合いに先立たれた老人独居の家が、いまとなっては使わない部屋を残したまま、固定資産税の心配はあるものの、家賃の要らない家に済み続けているというわけです。この家も、老朽化が進み、住まいとして機能しなくなったりします。災害時にはひとたまりもない家も出てきます。
 
 フローとしての住まいではなく、ストックとしての住まいを考えるのが、エコの基本中の基本だと思うのですが、住まいのエコといえば、家の断熱性を高めたり、エアコンに頼ったり、太陽熱利用の設備を導入したりすることだと、行政までがその後押しをしています。庶民から集めた血税を、地球温暖化防止という御旗のもとに、一部の家持ち層のために使おうとしているわけです。たとえば、エコ戦争の最新鋭兵器としての電器製品類は、家庭に入ってくるまでに、どれほどの反温暖化行為をしてきたのか確かめようともしません。これは「エコへいき」対策ですよ。


●風の音にぞ 2008.08.29(金)

雷の次位
水難災害時のボランティアの仕事

 この近くでも凄い雷でした。先の雷で、ネットと電話がダウンして、やっとのことで修理してもらって、ほっとしていたときです。あのときは、打ち合わせで仕事部屋を留守にしていて、対策のしようもなかったのですが、今回は、とにかくパソコンの電源を切りました。夕食を済ませた後のことです。いつもならパソコンに向かって、何やらし始める時間なのですが、それもできず、少し多めのチューハイのあと、えいやっと寝てしまいました。何度か、ものすごい音に起されましたが、ああ、雷くんが元気にやってるわいとさほど気にしないで、すぐ、眠っていました。
 
 何せ、地震の次に恐い存在だと昔の人は諭してくれます。確かに、あんなものに一撃されたらたまったものではない。しかし、今回もそうですが、恐いのは一緒にやってきた豪雨の水害でした。土砂崩れや河川の氾濫が、平穏な日常生活を襲ってくる。昔の人たちのくらしに、水害がなかったはずはない。地震の時だって、その後に襲ってくる山崩れなどを伴う水害は、恐怖の対象だったに違いないのに、雷の先にも後にもランキングされていないのはどうしてだろう。齢60の半ばを過ぎた男が考えあぐねてしまうのです。ささいなこだわりではあるのですが。
 
 また、反対に、日照り続きなどでの水飢饉も恐かったに違いありません。いわゆる大都市の江戸には、生活に支障をきたすほどの水不足はなかったのでしょうか。豪雨や日照り続きの災害に、下々の民はどのようにして生活を守ったのか。そのときのコミュニティでの、人の絆はどのように機能したのか。行政であるお上は、何をしてくれたのか。勉強不足の私には、その答を見出しずまいです。人と人の支えあいの限度を超えた苦難を乗り切った民たちの智慧を知りたいと思います。それがいまのまちづくりやボランティアの基本理念につながるものはないかと。
 
 地震災害には、生活支援のボランティアが脚光をあびます。水難被害のときのボランティアはどのように行われるのでしょうか。被害規模の大小はあるにしても、支援の必要がないわけはないでしょうし、指定避難場所もあります。こんな被災者に対して、どのような支援が行われているのか。確かに、浸水被害では家屋の倒壊はなく、家具や建具の修繕、清掃や取り替えなどで生活を復帰できるかもしれない。残存家屋の倒壊診断なんかほとんど要らない。炊き出しをやったり、慰問の活動だけでいいのか。災害ボランティアについて、考える課題が増えたようです。


●風の音にぞ 2008.08.28(木)

玄人未満
情報活用が簡単時代の玄人と素人

 「玄人はだし」という言葉があります。専門家でないのに、専門家も負けるぐらいよく研究して知っていることで、玄人もはだしで逃げる、という意味からということです。専門家とは、プロとだけには限らないでしょうが、最近はこの「玄人はだし」の人が多くなっているようです。いろいろな情報が、ウェブなどを通じて、居ながらにして入手でき、また、それを蓄積加工できるパソコンという道具が普及しているせいもあるでしょう。ひとつのキーワードで、数時間もすれば結構な量の情報が得られます。考えてみれば、これは大変な文化革命といえます。
 
 情報の価値が弱まっているのではなく、情報が普遍化している証であり、これに異を唱えるつもりはありません。私自身その恩恵に預かっているのですから。かつては、情報集めには苦労したものです。ひとつの企画のために、バックアップデータが欲しくて、取材したり、統計データを政府刊行物センターで集めたり、図書館に通ったり、何軒かの書店を巡ったりしたものでした。それなりの時間も費用もかかったものです。それだけに、集めた情報から生まれた企画なりが、ある価値を持って受け入れられたのかもしれません。プロとしての真骨頂が発揮できました。
 
 「玄人はだし」づくりを推進しているひとつが、いま、いろいろな方面で流行っている「認定制度」ではないでしょうか。ご当地ものであったり、あるジャンルのものとか、どんなことも認定の対象にしてしまいます。ただ、認定する側に、もったいぶって「御墨付き」を与える不遜な姿勢が気にかかるのです。それがビジネスになり、ある種の人たちの仕事の確保につながる。資格制度が、取得した後で実際の就職にはさほど役立たないように、お下し制度が、与える側とそれを取得した人に差別につながりそうな優越感をつくるだけのようで、どうも落ち着きません。
 
 「玄人はだし」が、どんどん増えていて、玄人との見分けがつきにくくなっています。玄人がプロと言い切れないでしょうが、どんなに玄人になっても、プロとはよぺないようです。もちろん「玄人」が「玄人はだし」の上位に位置する存在ではないことだけは確かです。玄人がその情報や経験なりを使って、職業にしているのか、あるいは、金銭なりの対価を得ているか、が分け目なのでしょう。その道で仕事にするプロには「ごめんなさい」では逃げられないものがあります。プロとは、情報の量ではなく、それをどのように使っているかの質のことかもしれません。


●風の音にぞ 2008.08.27(水)

防災訓練
訓練の準備段階で発揮する想像力

 総合防災訓練が、8月31日に行われます。それに先立って、当日の、災害ボランティアセンター開設訓練の準備のための打ち合わせ会議がありました。前日に、AMさんから急きょ呼び出しがかかり、参加することになりました。実は、もうひとつ協働推進課の編集会議があったのですが、うっかり忘れていて、こちらはすっぼかしてしまいました。次号のテーマ選びの打ち合わせで、自分としては、適当なテーマを思いつかず、まあ、そのときになって考えるかと放っておいたせいもあり、結果は後で聞けばいいと、始めての防災訓練の方を優先させてしまいました。
 
 会議の参加メンバーは、ボランティア協議会の中心メンバーと社協の所長、課長と2名の職員、総勢十数名です。お定まりの、なくてもないような、ご挨拶があります。そして、資料が配られ、担当者からの説明に入りました。始めてのことであり、様子をよく飲み込めないままに、成りゆきを見守ります。災害時の具体的なイメージもわかず、聞いているだけです。まあ、訓練計画としてはよくできたものでしょう。どこにもれがあるのかもわかりません。耳が遠くなっているせいで、よく聞き取れない応酬もありますが、結構エキサイティングなやり取りが続きます。
 
 このまちには、災害ボランティアの達人、TKさんがいます。作家でボランティアに関する著作もあり、阪神淡路大震災や新潟信越地震でも、単身で、あるいは家族ぐるみでのボランティアを経験された人です。その貴重な経験は余人を寄せつけないほどのもので、このまちのボランティア協議会は、その指導の下に実践的な訓練や準備を続け、豊富なノウハウを蓄積しています。まさしく、万一時の災害ボランテイア活動の大戦力になるグループを造り上げました。会議では、TKさんやメンバーから、よくできていると思っていた準備計画の不足分が指摘されます。
 
 それが痛快です。想像力に関わることでもあるのでしょうが、実際の災害時をよく理解していないと訓練にならないと。たとえばボランティアの質の問題です。好意だと受け入れても、その機に乗じた窃盗も横行するという事実。それを受け入れの時どのように未然に防ぐか。また、面白い記事、絵になる映像を追うマスコミ報道の取材陣をどのように捌くか、などなど。ボランティアの窓口で起る、テレビや新聞のこちら側では想像できない事実への対策があっての訓練だと。型通りのセレモニーとしての訓練、アリバイづくりとしての訓練に対する強烈な反撃です。


●風の音にぞ 2008.08.26(火)

まち育て
暑すぎ福生七夕まつりの行く末は

 急に涼しくなりました。雨のせいでの涼しさのようで、秋の涼しさにはまだのようです。晴れた秋の日の心地よい涼しさだとうれしいのですが…。また、あんな暑さが戻ってくるのでしょうか。それにしても、デブの年寄り泣かせの、結構な暑さでした。あんな暑さのなかで、福生の七夕まつりを催行したのだから、例年のこととはいえ、おそれいりました。58回とかで、よくまあがんばっています。市長さんがオープニングの挨拶で、子どもの頃、竹飾りの下を飛び回って遊んでいたと話されていましたが、まさしく彼は生っ粋の「ヂモピー」なのですね。
 
 七夕まつりの期間中、2回ばかり竹飾りの下を通りました。1回は所用あってで、もう1回は、少し時間をかけて、見て廻りました。肝心の竹飾りが寂しいですね。年々、その他の行事に重点がおかれるようになっているのかもしれません。仙台をはじめ、いろいろなまちで七夕まつりを、観光や商店街の客寄せの目玉としています。「福生の七夕」とこのまちに来る前は期待していました。何しろ、歴史はある。そんじょそこいらの新参七夕とは、わけが違うはずだと思っていました。暑さなんか吹っ飛ばしてくれると。それどころか、暑さは一層身に応えたものでした。
 
 商売柄、まちおこしの企画の相談を受けることがありました。商店街などは、昔はよかったと、なんとか往時のにぎわいを取り戻したいと。商店街に、こんなに客が寄り付かなくなったのは、行政の無策のせいではないか、とまで言い出します。商工会の若い人たちは、何とかしたいと、全国の成功事例を探しては連れ立って視察に出かけ、それなりのレポートをまとめます。しかし、なんともなりません。何かアイデアはありませんかの求めに、こんなこと、あんなことと企画書にまとめて提案しても、ことごとく、うちのまちでは無理ですとなってしまいます。
 
 アイデアの善し悪しを、多数決で採択しようとするわけです。あるいは、いくつかの評価基準を作っておいて、採点して集計する。こんなやり方では、ビッグなアイデアも日の目を見ることはありません。それでいて、全員の叡智を集めて検討した結果、これはという案はありませんでした、となってしまう。発展目覚ましい民間企業なら、トップの一存でOKが出ます。あとのスタッフの仕事はGOとなったその案を企画化して、より具体的に計画し、実践する。福生の七夕も、このままだと、模擬店と行列踊りとバフォーマンスショーのプアなイベントになっちゃうよ。








2008/08/26 14:10:09|プレゼンテーション
自伝エッセイ書き方講座02
会いたい人に再び逢う報謝巡礼その2


3. 報謝巡礼の書き方

3.01. 企画書の作成

○まず、企画書を書く

 いよいよ、本格的に「報謝巡礼」の執筆にかかりますが、その前に、企画書をつくります。これは書こうと決めた自分の決意を、整理するためのもので、「報謝巡礼」づくりの必至の条件です。書きすすめていく途中で、とかく書こうとする意志が弱まることもあるものです。もちろん、乗って書いているときは感じない思いですが、嫌な思い出などにぶつかると、つい書くことを先送りしがちになります。そんなときに、初心に戻って、自分を鼓舞するためにも必ず書くようにします。

○5W3H・T&Sでまとめる

 企画書は、別添の用紙に書いてください。これを執筆中の座右に置いたり、拡大コピーして、ディスクまわりの目につきやすい所に貼り出すのもよいでしょう。著者名を書き、タイトル、サブタイトルを決めます。作成日も大切です。企画書の項目に書く内容は簡単でも構いませんが、「その他」の項以外は、用紙の5W3HT&Sのすべてに書きます。特に、「What・目的」と「When・執筆期限」は重要です。執筆期限については、長過ぎないこと。百人の巡礼先で1年くらいが妥当なところでしょう。

3.02. 一覧表の作成

○一覧表をつくる

 先に絞り込んでおいた巡礼先の50人を、訪れる順に、一覧表に記入します。別添の「一覧表」に記入します。ここに記入するか、この表をコピーして、企画書と同様に、執筆中の座右に置いたり、貼り出しておくのもよいでしょう。訪れる順序は、前のページで確認したように、最初は伴侶とし、50人目に母にすることを基本としてください。一里塚としての十番台に、全体にひとつの物語として流れるように決め込みます。決定的ではないにしても、順序は変えないようにします。

○ここでは本名を書いておく

 一覧表に、通し番号になる巡礼先の札所番号、訪れる人の本名、イニシャル、関係続柄、13文字の寸言紹介、四字熟語の遺言、書上げ日を書きます。巡礼先は、実際の表現にはイニシアルをつかようにしますが、ここでは、本名を書いてください。寸言紹介は、後で変えても構いませんが、タイトルになる大切なものです。遺言は後回しにしてもよいでしょう。書き上げ日は、目標期日を設定します。私の「デジ還親父の報謝巡礼」を参考にしてください。

3.03. 全体スケジュール

○書き急がないこと

 「報謝巡礼」のHONづくりのために、いつ、どんなことをするのか、全体のスケジュールを設定します。ポイントは、無理のない計画を立てることです。ただ、日頃、書きなれていないひとにとって、どのくらいのペースで書けるのか見当がつかないものでしょう。書く作業は、パソコンに文章を打ち込むだけではありません。実際に書く物理的な時間は、そんなにかからないものです。さあ、書こうと意気込んでバソコンに向っても、スラスラとかけるものではありません。書けずに焦ってしまうことが多いものです。

○1ヵ月10章のペース

 何よりも大切なことは、書くための材料をたっぷりと用意することです。多過ぎて、整理するのに苦労するくらい用意したいものです。材料さえあれば、後はそれらの素材の交通整理をするだけで書けるものです。材料を集める時間を、実際に書き込むために用意する時間の2〜3倍は取るようにしてください。まず、10章分を書くために、1ヵ月を取ってください。うち、20日間は取材や素材整理にあてます。20章くらい書くと、自分のペースがつかめますので、その段階でスケジュールを調整しましょう。

3.04. 執筆管理

○目標設定と進捗管理

 「報謝巡礼」は、勢いにのって一気に書き上げるものではありません。そうしようと思って、なかにかできるものではありません。こつこつと書き上げていくことが重要です。ここまで書き上げてきたという思いを重ねていくうちに、十人、二十人、三十人、そして、50人目に母親の懐に飛び込めるというものです。そのためにも、興にまかせた執筆ではなく、巡礼先毎に、いつまでに書き上げるかの目標を決めて、その進捗状況を管理するようにします。ものづくりの生産ラインの進め方と同じです。

○訪問先毎に進捗を管理する

 執筆管理表で、執筆管理をしましょう。この表も別添の用紙を使ってください。そのまま記入するか、または、コピーしてください。巡礼先一覧表から、巡礼先を書き写します。そして、書き上げ予定日を入れてください。巡礼先一覧表に書いたのだからとしないで、しっかりと管理表をつくるようにします。書きすすめていき、書き上げたら、「OK」のところを、蛍光マーカーなどで塗りつぶします。予定日までに書けなかったら、力を入れて次の予定日はクリアするようにしてください。

3.05. 情報出し

○訪問先毎に整理する

 書くためには、材料が要ります。先に準備しておいた材料を、訪問する巡礼先ごとにまとめるようにします。材料は、多いほど書きすすめやすくなります。この材料は、写真、手紙、日記、年賀状など、その人に関わるものすべてを取込んでおきます。整理しながら思い出したことをメモにしておきます。巡礼先毎に、封筒をつくり、この中に入れるようにしたり、ワープロに、その人のファイルをつくっておき、メモを打ち込んでおくのもよいでしょう。この方法だと、書くときに利用できて便利です。

○取材する時間も計画しておく

 取材することも大切です。この機会に、ふるさとを訪ねたり、ご無沙汰している人に会ったりするのもよいでしょう。旧交をあたためられ、改めて人の輪が広がります。いろいろな消息を聞くのも、書くための情報が増えていくものです。企画する段階で、取材するための時間を考慮しておくことも必要です。不明なことがあったら、その人に電話やメールなどで尋ねてみることも大切です。自分の思い込みで、勘違いしていることも少なくないものです。自分にとっての「真実」でも、確かめることは無駄ではありません。

3.06. 本文の文体

○手紙を書くように綴る

 「報謝巡礼」は、実際に本人に届けなくても、心をこめて書く手紙、書簡です。報告書や日記ではありません。話しかけるように書くようにしましょう。そのためにも、文体はやさしいものにします。「である」調ではなく「です」調にしてください。それが、たとえ日頃から親しい伴侶や子どもたちであっても、ここではていねいに呼びかけたいものです。もちろん、書く内容やリズムによって変ってくることがあります。前後の文脈によりますが、そのときは、あえて改めない方が自然に感じられることもあります。

○分りやすいことがポイント

 分りやすい文章にすることです。別掲の「分りやすく書くポイント」を参考にしてください。「報謝巡礼」は、文学的な完成度を追求するような文芸作品ではありません。読み手に、文章を楽しんでもらうというより、あったことや思っていることなどを、分りやすく伝えることを大切にする実用的な文章です。文章にこだわっても、いっこうに構いませんが、そのために執筆期限を守れないようでは、本来の目的を逸脱してしまいます。読まれやすくするための改良は、推敲のときのまでとっておきましょう。

3.07. ブロック構文

○実用文としての書き方

 「報謝巡礼」は、プロックを積み上げて構築物を作り上げていくように書くことをすすめています。あらかじめ、一定の文章が入る枠をつくっておき、その枠内に文をはめ込んでいくことで、書き慣れない人でもやさしく書けるようにした方法です。これは実用文の代表でもある「マニュアル」を、30数年も書き続けてきた私の経験からの方法です。量が多かったら削り、少なかったら書き足すなどして、枠の中で調整します。

○書き方の基本を守る

 ひとつの「章(巡礼先)」に、3つの「節」をつくり、ひとつの「節」に、5つの「項(段落)」をつくります。1つの「項」は、4〜5の文(センテンス)として、その文字数を170字から200字にします。ひとつのセンテンスの文字数は、35〜40字にします。ちなみに、私の「デジ還親父の百人巡礼」では、この原則を極力徹底しました。なにか堅苦しい決めごとのようですが、書きすすめていくうちに、このリズムが身につき、心地よいものにさえなってきます。この原則を守るようにしてください。

3.08. 大見出しと小見出し

○対象者との関係を大見出しに

 「報謝巡礼」では、章毎に、つまり巡礼先毎に、その人について短文紹介をして自分との関係を明らかにして、これをその章の大見出しにします。大見出しの字数を13文字とします。文章的な根拠はありませんが、簡潔に言い切れることや、アナログ印刷組版でのデザイン的な納まりから決めたものです。12字以下でも、14字以上でよいのですが、ここでは13字に統一します。この字数にすることも、「報謝巡礼」を楽しみながら書きすすめるための工夫のひとつです。書き上がった後や推敲する時に調整しても構いません。

○内容を伝える小見出し

 その代わりに、章の中につくる3つの項の見出し、これを「小見出し」としますが、この字数は15字から20字程度と、緩やかな決りとして、この範囲に納まるように工夫します。また、この小見出しは、その項の内容を簡潔に要約したものとし、これを読んだだけでおおよその内容をつかめるようにします。体言止めや「です調」「である調」など、内容に合わせてください。項目名ではないので、あくまでも、ひとつの文章になるようにしてください。どんな内容が書いてあるのかを示して、読む気を誘うことです。

3.09. 遺言と本文

○四字熟語の造語に挑戦

 大見出しとセットのキャッチコピーとして、四字熟語の「遺言」を書きます。本文と共に、巡礼先の人に謝辞や注文、願望などを伝えるのも「報謝巡礼」の書き残す楽しさです。ここでは一般に知られている四字熟語だけではなく、新たに、その人に捧げたい最適な言葉をつくるようにします。いろいろな意味の漢字を使って、造語に挑戦してみましょう。私の「デジ還親父の報謝巡礼」の例を参考にしてください。この「遺言」は、推敲の時に書いてもよいでしょう。立ち止まってしまうと、次に進めなくなってしまいます。

○文の長さは平均で押さえる

 先に見たように、文(センテンス)の文字数を170字から200字にして、ひとつのセンテンスの文字数は、35〜40字にします。これは分りやすい文章の基本ですが、おおよその目安と考えてください。私の「報謝巡礼」の場合、ある章では、センテンスの文字数は、最少の15字から最大の82字であり、平均では41字になっていますが、全部が35字から40字の範囲に納まっているわけではありません。文字数だけではなく、漢字の割合や句読点の打ち方によっても、読みやすさが変ってくるものです。

3.10. ワープロ打ち込み

○パソコンで書くのが必至の条件

 報謝巡礼倶楽部の入会条件は、文章をバソコンのワープロ機能を使って書けることです。手書きで書いている人には、まず、バソコンで文章を書けるようになることをおすすめします。パソコンで文章をデータにすることで、電子組版ができますし、インターネットで発表したり、Eメールで送ったり、CD-ROMにして配付することができます。「報謝巡礼」のHONづくりには欠かせないスキルです。本格出版をする場合に、印刷会社に依頼するときも、データで原稿を渡す方が、早くつくれ、経済的です。

○キーワードをつないで文章化する

 パソコン(ワープロ)で書くためには、まず、思いついたキーワードをそのまま打ち込んでいきます。その人専用の別ファイルに打ち込んでおいたメモや、手書きのメモから、とにかく順序などを考えないで、どんどん打ち込んでいきます。ひと通り打ち込んだら、ざっと全体を見て、いくつかのテーマに分類整理してみます。これらのテーマのうち、書こうとしていのテーマに相応しいものに絞りこみます。このテーマで集めたキーワードをつないで文章化します。なお、退けておいた分も捨てないでおくことがポイントです。

3.11. 文章チェック

○1章ごとに完成させていく

 「報謝巡礼」づくりは、短編物語を、50編つくる作業です。これらの作品は独立した完成作品になります。企画段階で、全体の流れを考えて構成しますが、どこで中断しても、既に書き上げた章の作品価値が失われるものではありません。ひとつずつ積み上げていくというつくりかたです。そのために、前に書いた章の部分を、後で直すということは、基本的にしないようにします。というより、ひとつずつの章をも心をこめて書き上げていきます。そのために、推敲も一章ごとに済ませていくようにします。

○ハードコピーでチェックする

 人にもよりますが、バソコンのディスプレイで内容をチェックするより、プリントした紙の書類として確認したいという人は少なくありません。ここでは、HONづくりを、PDF(Acrobat)ファイルだけで良しとするする人でも、章毎に書き上げた後に、紙にプリントするようにしてください。電子組版をする前の、ワープロソフトのままの体裁ですが、アナログ出版では、この形でのチェックは欠かせません。このチェックは、どこででもできますし、また、バソコン操作が苦手な人にでもチェックしてもらえます。

3.12. 全体校正

○紙でチェックする

 プリントしたら、この段階でしっかり校正します。本格印刷の場合のゲラ校正です。バソコンのディスプレィ画面で、十分に校正したつもりでも、紙に印刷してみると、誤りが見つけやすいものです。仮製本の場合でも、いったん綴じてしまうと、誤字脱字が見つかっても、なかなか手がつけられなくなってしまいます。綴じる前なら、直したいページだけを差し換えればよく、製本した後で朱筆を入れるということをしなくても済みます。早く製本してみたいと焦る気持ちをおさえて、ていねいに校正しましょう。

○校正は「観る」こと

 校正で必要なことは、読まないこと、「観る」ことです。書いた本人ですから、ついつい読んでしまいます。誤字や脱字があっても、気がつかずに飛ばし読みしがちになります。自分で書いたということを忘れるようにして、よく「観て」ください。特に、パソコンで書いた文章は、間違った漢字変換の落とし穴があります。自信のない漢字は辞書で調べるようにしましょう。なお、他の人に校正をお願いするのも効果的です。ただ、著作者に関心の強い人だと、つい興に乗って読んでしまいますので気をつけたいものです。

3.13. 一次推敲

○分りやすい文章か

 書き上げた文章の、字句や表現を練り直す推敲の作業は、「報謝巡礼」でも欠かせません。ただ、ここでは文芸作品としての優れた表現ではありません。必要な文章は、わかりやすさです。ここでは、どのように書くかというよりも、何を書くのかを大切にします。従って、書き上げた後の文章のチェックは、誤字脱字がないか、表現に過不足はないか、全体として違和感がなく、統一感があるか程度の整理にとどめます。書き上げたら、完成したひとつの作品として、順次、データとしてファイルしていくやリ方です。

○推敲をし過ぎない

 注意したいのは、書いた文章への愛着感などから、それを練り上げ過ぎないことです。日頃、文章を書く機会がなく、書き慣れないと、推敲をしだすときりがなくなります。迷路に迷い込んだようになることが多いものです。何度も確認しますが、「報謝巡礼」づくりは、結果として文芸作品になることはあっても、最初から文芸作品づくりを目指すものではありません。ある程度の段階で、それ以上の推敲をしないようにします。大切なのは、文章を練り上げるよりも、次のステップに進んで目的のHONをつくることです。

3.14. まえがきとあとがき

○書き出す思いを「はじめに」で

 本文を書き出す前に、「まえがき」を書きます。なぜ、この「報謝巡礼」をつくろうとしたのかなどの思いを、そのために取材したことや近況報告などと共に綴ってみます。いわば最初につくった企画書の文章版です。これを書くことは、途中で挫けそうになったときに立ち直るための、強い励みになるものです。文章の構成は、他の章と同じとします。文字数も、他の章に合わせます。これを「はじめに」を大見出しとして、3つの節をつくり、小見出しを立てます。いわば、自分自身を訪れる、ウォーミングアップの章です。

○達成感の中で「おわりに」

 全部を書き終わったら、「おわりに」を書きます。好きなことを、一切の制限なしに、思う存分に書いてみます。書き上げた直後の熱いままのときでも、また、一旦、ひと休みし、ひと通り読み直して、推敲した後の冷静な思いの中で書いても構いません。ここでは、自分に課していた決まり事から、自分を解放しましょう。50人を巡礼して自己を再認識した体験や、書き上げた達成感と充実感が、すてきな「あとがき」にしてくれるはずです。この「おわりに」は、巡礼の旅を完走した後のクーリングダウンの章です。

3.15. 目次の作成

○一覧表通りに目次をつくる

 最初につくった「巡礼先一覧表」は、「報謝巡礼」の目次になります。ただ、書き上げてみたら最初に書いた、いろいろなことに気づいて、大見出しになる「寸言紹介」を訂正したくなることがあります。巡礼先の対象者を変えるものでなかったら、この寸言紹介は、変えても構いません。ただ、ここでもあれこれ考え込んで、推敲を重ねてしまうと、迷路にはまり込んで先に進めなくなったり、ペースダウンして、目標の書上げ日目標が達成できにくくなってしまいます。思いきることは、質を低下させることではありません。

○章毎の扉をつくる

 先に、章ごとに、書き進める上での一里塚にするようにしました。目次も、各章を書き上げる毎に、確定していきます。「寸言紹介」や「遺言」の推敲による直しも、章ごとの見直しの時に行うようにします。いわば、ひとつずつ完成した短編作品のまとまりを、中編作品に仕上げていきます。ここで目次をつくり、章毎の扉をつくります。50章全部を書き上げる途中で、10章毎に、小冊子にするなどの楽しみ方もできます。最後に、これらの目次を一緒にして、全体の目次にします。

3.16. 索引の作成

○ジャンル別からリンクができる

 「報謝巡礼」では、全体としてのストーリー性を考慮して順序付けて配置した巡礼先の対象者を、関係続柄とは別のジャンルから、身内親戚や時代毎に遭遇した人で検索できるように索引をつくります。これは読む人に、50人ものなかから、見つけたい人をすぐ見つけてもらうための配慮で、PDF(Acpobat)ファイルで編集するとき、索引ページで対象者名をクリックすると、その人のページにジャンプするようにリンクづけをすることができます。電子出版ができるデジタルデータならではの特性を活かした方法です。

○デジタル出版の特徴

 私の「デジ還親父の百人巡礼」のデジタル版では、1章から100章までの順序通りの目次とともに、次のようなジャンルの中で検索できるようにしています。「身内親戚」16人、「郷里時代」6人、「H社時代」14人、「修業時代」5人、「新人時代」14人、「成長時代」14人、「円熟時代」25人、「市民生活」6人の8ジャンルです。なお、このデジタル版では、目次からも各巡礼先にジャンプするようにリンクさせています。制作には少し時間がかかりますが、さほど難しい作業ではありません。

4. 電子組版

4.01. 版下制作

○版下をつくる

 ワープロソフトで書き上げた原稿を、そのままプリントしたものを綴っても、本としては不十分です。手づくりの本であっても、本としての体裁を整えます。「報謝巡礼」では、アナログ本にする標準のスタイル(デザイン)を設定しています。このための体裁づくりが、デザイン編集作業です。本としてのページそのまま確認できる版下をつくります。本格出版では、パソコンでつくったデータを、そのまま印刷工程に持込むこともしていますが、ここでは、きちんと版下をつくります。

○編集しながらつくる

 この版下をプリントして本をつくります。本格出版では、この版下を高精度なものにするために印画紙にプリントしていましたが、手づくり出版では、パソコンのプリンタで、普通紙にプリントしたもので十分です。かつて、デザイナーがデザインレイアウトを決めて、書体(フォント)やサイズ(ポイント、級数)を指定した文字原稿を写真植字で打ち出して、これを版下オペレータが、台紙に貼り込んで版下をつくっていました。これをパソコンで、書き上げた文章を、編集しながら版下をつくってしまうわけです。

4.02. レイアウト編集

○DTP作業

 この版下作成の作業が、電子組版で、DTP(ディスクトップバブリッシング/desktop publishing)という作業です。デザイン編集作業を、すべてパソコンで行い,プリンタで印刷することも、ネットワークに電送することもできるようになりました。そのために、原稿を書いた著作者本人でも、デザイン編集が行えるようになっています。「報謝巡礼」のHONづくりでは、標準のデザインに合わせてできるようにして、この作業を、原稿全章を書きあげてから行うのではなく、章毎に実施します。

○代表的なソフト4種

 DTP作業ができるパソコンのアプリケーションソフトとして、代表的なものに、クォークエクスプレス(QuarkXPress)、ページメーカー(AdobePageMaker)※、イラストレーター(AdobeIllustrator)、フォトショップ(AdobePhotoshop)があります。グラフィックデザイナーには不可欠のいわばプロ仕様のソフトで、編集したデータをそのまま印刷会社に渡して印刷できるようになっています。個人的に、趣味的に使うには、ソフトも比較的高額であり、使いこなすにはそれなりの習練が必要ですが、高度な表現ができます。 ※最新Vとして「インデザイン」があります。WORDでもつくれます。

4.03. 写真を入れる

○実際の写真を貼付ける

 HONの中に、写真や絵や図表を入れたい場合があります。デジタルカメラで撮った写真は、データになっていてバソコンに取込むことができますが、アルバムなどにある写真は、そのままではパソコンにデータとして取り込めません。そのために、DTPで編集するときに、あらかじめ写真や図表を入れるスペースをとっておき、プリントしたハードコピーに、後で貼付けるようにします。ハードコピーを、印刷(コピー)する版下として利用するわけです。最近のコピー機は、写真もきれいに複写できるのもうれしい点です。

○スキャナーを使う

 できることならスキャナーを備えたいものです。安価な製品も出回っています。これがあれば、懐かしい写真を複製したり、大きめに描いた絵や書を取込んで縮小したりして、年賀状等にも使うことができます。データにしておくと、デジタルカメラで撮った写真と同じように、メールで送ったり、拡大縮小だけではなく、カラーを調節したり、いろいろ加工、利用できます。DTP制作のときも、レイアウトを確認調整しながら、好きなところに張り付けることができ、全体のデータとして扱えますから何かと便利です。

4.04. カラーの扱い

○表紙デザイン

 アナログ出版にはもちろん、デジタル出版にも「顏」になる表紙が必要です。本格出版では、印刷会社や出版社に依頼すれば、デザイナーを紹介してくれますが、クリエイティブな制作作業だけに相応の費用がかかります。手づくりHONでは、身内や友人なとに絵心のある人がいれば、その人にお願いするのもいいでしょう。この場合、ビジュアルイメージを描いてもらい、これをスキャンして取込み、パソコンの書体を使ってデザインすればよいでしょう。自分で描くのも、作品として一層の達成感が得られます。

○カラーページのプリント

 パソコンでプリントする場合は、表紙なと本体の一部だけをカラープリントするという方法もあります。もちろん、パソコンのプリントだけでつくる少ない部数のHONなら、全部をカラープリントしてもよいでしょうが、5部以上になると、本体はパソコンでプリントして、必要部数を白黒コピー機や簡易印刷機でプリントするということになります。この場合、カラーページだけバソコンでプリントして、製本するときに合わせるようにします。一部だけのカラーでも、見栄えがよくなります。おすすめする方法です。

4.05. 本文のプリント

○2〜3部ならプリンタで

 手づくリのアナログ出版で、仮に製本までつくってみることも含め、2〜3部つくるのなら、パソコンのプリンタでプリントしてもよいでしょう。「報謝巡礼」のHONは、少ない原紙を何十部も複写するのではなく、原紙の枚数が多く、数百ページにもなってしまいます。元の版下になるハードコピーをプリントするのですから、このときに一度に2〜3部つくっても、さほどの手間になりません。本文は白黒でのプリントが中心になりますから、インクも黒色を少し多く使うだけです。手をかけるのも楽しい作業です。

○コピー機で両面コピーを

 本誌の印刷は、10部位までならコピー機を利用してもよいでしょうが、それ以上の部数をつくりたい場合は、簡易印刷機を使うのが便利です。といっても一般の家庭では、コピー機や簡易印刷機を置いてあるところはあまりないでしょう。コンビニやスーパー、文具店等にあるコピー機を使ったり、知り合いの事務所にお願いして、使わせてもらいましょう。公民館等にある場合もあります。ただ、コンビニ等のコピー機は、両面プリントができません。袋とじ印刷では、厚さが倍になってしまいますが、仮の製本ならいいでしょう。

4.06. 印刷会社利用

○印刷会社に依頼

 手づくりではなく、本格出版をしたいときは、印刷会社に印刷製本を依頼することになります。パソコンをはじめとする技術の進歩で、いろいろな印刷ができるようになっています。かつて、印刷は活字を1本ずつ拾って、組み合わせて印刷していました。写植の時代になっても、ある程度の部数がないと、少ない部数では不経済だとされてきました。最近では、コピーのような手軽さで印刷できるようになっています。大量に印刷するより、1部あたりのコストは高くなりますが、手が届かないほどではありません。

○印刷会社を選ぶ

 自費出版を引き受けてくれる印刷会社が増えています。出版社の中にも、自費出版に力を入れている会社が多くなっています。インターネットで検索しても、いろいろな会社を見つけることができます。中には、印刷料金を案内しているところもあり、予算をたてる目安になります。出版社は書店へ配本できることをうたっているところもありますが、販売を考えないのなら、直接、印刷会社に依頼する方が有利かもしれません。頼むときは、数社に見積ってもらい、いろいろ比較して選ぶようにしましょう。

5. デジタル出版

5.01. アナログ版との違い

○低コストで発信できる

 バソコンで「報謝巡礼」を書いたら、ぜひにもデジタル版に挑戦してください。既に、文字(テキスト)データは、出来上がっています。インターネットが使え、CD-ROMをつくれる環境も整っています。ITは日進月歩どころか、秒進分歩の勢いで、大きく様変わりしています。コンテンツ(内容)を、紙メディアだけに頼っていた時代は、既に過去のものです。紙の本では、つくることや流通にコストがかかりますが、デジタルメディアなら、個人レベルで低コストでつくれ、ラクに情報が発信できます。

○パソコンだけで読む

 ただ、デジタルメディアでは、アナログ版印刷物のデータそのままを、デジタルメディアにするのではなく、デジタルの特性を活かしたものにすることがポイントです。つまり、バソコンのデータを、紙のハードコピー用に戻すためではなく、パソコンだけで読むためのものにすることです。ネットには、印刷物そのままをデータとして提供しているサイトもありますが、パソコンのディスプレイで見るために提供すること。持ってているバソコンのディスプレィサイズの画面でも、読みやすいようにデータを加工することです。

5.02. ファイル

○スクロールなしで読めること

 「報謝巡礼」のデジタル版は、例えば。WORDでつくったファイルデータを、そのままネットにアップロードしたり、CD-ROMにすることでも、読んでもらえます。この場合は、紙のハードコピーとして読んでもらうのではなく、一般的なサイズのディスプレィでも、ひとつの画面でスクロールを繰り返すことなしに、抵抗なく読める大きさの版面にして、文字のサイズもそれなりに大きくしておきます。読む人が、このデータを取込んで、その人なりに加工することもできますが、これは期待しない方がよいでしょう。

○リンクの特性を活かす

 パソコンでは、コンテンツ同士をリンクさせて、つぎつぎに画面をジャンプさせて見ることができます。ネットのホームページでは、ごく当り前になっている仕組みですが、これを「報謝巡礼」デジタル版にも取り入れたいものです。目次や索引を開いて、そこから、見たいページにジャンプできるようにしておきます。そのためのソフトとして、AdobeAcrobat(アクロバット)でつくるPDFファイルがあります。ホームページのためのHTMLファイルも、リンクできますが、文字の縦書きは苦手です。

5.03. メディア

○CD-ROM

 PDFファイルにしたデータを、配付するためにはCD-ROMに記録するのが、やりやすい方法です。最近のバソコンでは、CDRの機能は一般的になっていますし、この機能が備わっていなくても、手ごろな価格の外付けCDR装置を入手してもよいでしょう。1枚ずつつくっていっても、手づくりでアナログ版の「報謝巡礼」をつくるよりも、ずっと簡単です。ディスクの上の、パソコンだけで処理できるというのも便利です。CD-ROMも12cmや8cmサイズ、カードサイズもあり、いろいろ使い分けができます。

○ホームページ、ブログ

 「報謝巡礼」PDFファイルを、インターネットのホームページやブログで発信することもできます。PDFファイルを開いて読むことができるアクロバットリーダーは、いろいろなソフトのCD−ROMに付録としてついていたり、ネットから無償でダウンロードできます。PDFファイルとして、自分のホームページに掲載したり、百人巡礼倶楽部のホームページで発表することもできます。なお、ホームページで、横書きになりますが、そのまま添付ファイルとして、「報謝巡礼」を掲載することができます。

5.04. 制作依頼

○電子組版制作

 PDFファィルを自分でつくらない場合は、できるところに依頼することになります。デザイン事務所や印刷会社などには対応してくれるところもあります。百人巡礼倶楽部でも、PDFファイル制作に対応しています。なお、PDFファイルにするためには、原稿をDTPソフトで、新たに再編集します。画面サイズや文字サイズを編集し直し、新たなデータにします。百人巡礼倶楽部では、「ページメーカー」で、B5判横位置の版面にして、文字サイズも18ポイントを標準にして編集して、これをPDFに変換しています。

○リンク付けの作業

 PDFファイルにしたら、これをリンク付けのデータ加工を行います。DTP編集時にあらかじめ「進む」「戻る」などのボタンをつくっておき、また、目次や索引を、リンクを付けやすいように幅を広くするなどしておきます。このデータを「アクロバット」を使って、リンク付けの作業をしていきます。目次や索引から、目当てのところにジャンプするように、ひとつずつ設定していきます。すこし根気の要る作業ですが、原稿を書き進めたことに比べたら、何ということもない充実した作業です。これでデジタル版の完成です。

                   以上

●この稿は「報謝巡礼マニュアル」を掲載したものです。ここで掲載できなかったページや、私の「報謝巡礼」などを紹介することができます。お問い合わせください。







2008/08/26 14:04:34|プレゼンテーション
自伝エッセイ書き方講座01
会いたい人に再び逢う「報謝巡礼」
その1

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目次

はじめに

1. 報謝巡礼を書こう

 1.01. 報謝巡礼とは
 1.02. 自分史との違い
 1.03. どのように書くのか
 1.04. 発表のしかた
 1.05. 百人巡礼のHON
 1.06. デジかアナか

2. 百人巡礼の企画

 2.01. 巡礼先の選び方
 2.02. 巡礼先に会う順序
 2.03. 報謝巡礼の構成
 2.04. 続柄と紹介短文
 2.05. 伝え遺す言葉
 2.06. 本文の節と項
 2.07. 小見出し
 2.08. 情報確認

3. 報謝巡礼の書き方

 3.01. 企画書の作成
 3.02. 一覧表の作成
 3.03. 全体スケジュール
 3.04. 執筆管理
 3.05. 情報出し
 3.06. 本文の文体
 3.07. ブロック構文
 3.08. 大見出しと小見出し
 3.09. 遺言と本文
 3.10. ワープロ打ち込み
 3.11. 文章チェック
 3.12. 全体校正
 3.13. 一次推敲
 3.14. まえがきとあとがき
 3.15. 目次の作成
 3.16. 索引の作成

4. 電子組版

 4.01. 版下制作
 4.02. レイアウト編集
 4.03. 写真を入れる
 4.04. カラーの扱い
 4.05. 本文のプリント
 4.06. 印刷会社利用

5. デジタル出版

 5.01. アナログ版との違い
 5.02. ファイル
 5.03. メディア
 5.04. 制作依頼

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はじめに

自伝エッセイ「報謝巡礼」のおすすめ

 「報謝巡礼」とは、会いたい人に、再び会いまみえる仮想巡礼旅です。本人がこれまでの人生でかかわりをもった人たちの中から、もう一度会いたい人を選んで、手紙を書く形式でまとめます。自分が生きてきた意味を見つめ直し、同時に、逢ったその人に謝辞を伝える自伝エッセイです。これは「思い」を遺す「遺言」になります。後世に遺すその人の伝説、その人が主役の物語です。

 人の物語は、いろいろな人とのかかわりの中でつくられます。その時々の、さまざまな場面で出会った人に、いま、再び逢い、語り合うことで自分の真実が見えてきます。そして、その時代背景が浮き彫りになってきます。たとえ、「事実」が自分が記憶していたことと違っていても、「自分にとっての真実」を書き遺すこと。そして、後世に残さなければならないものです。

 これを「HON(Handmade Original Newmedia)」にして遺します。「本」ではなく、ベストセラーを狙って文芸作品を書くことでもありません。著作者本人が自ら納得し、自分の存在証明のために、自分の全てを知らない親族や親しい友人たちに、より知ってもらうために、自分が歩んできた真実を伝えるものです。はじめに、原稿ありきではなく、目的ありきのHONづくりです。

生きざまのDNAとして遺します

 子は父親の背中を見て育つといわれます。しかし、知ってはもらえません。子らは父親を「分かっている」が「知らない」のです。母親にでも同じでしょう。知らないから、軋轢が生まれる。いまの時代、親が子に「自分を知らせていない」ために、いろいろな社会問題を起こすひとつの要因になっているのではないでしょうか。子らに、自分を知らさなければなりません。

 父親の生き方を、子らに見倣ってもらうためではありません。見倣うかどうかは、彼らの判断によります。その前に、父親がどのように生きたのかを知らせなければなりません。父親の生きざまを、子や孫たちへ、迷惑だろうが、遺しておかなければならないものだと思います。「報謝巡礼」は、その人のこころ、思いのDNAです。これは母親にとってもいえることでしょう。

 まず、私自信で書いてみました。私の場合は「デジ還親父の百人巡礼」として、50人ではなく、100人に会いました。私って何者だったのか。自分の存在証明としての遺し書きです。書ききれないほどの思いもあります。そして、あいまいな記憶をたどることは、楽しい仕事であることにも気づきました。こんな経験をもとに、あなたの「報謝巡礼」づくりのお手伝いをさせていただきます。


1. 報謝巡礼を書こう

○自分の存在理由を探る

 還暦を迎えた人を中心に、50才以上の人にお勧めする自伝エッセイです。半世紀以上生きてきた本人が、影響を受けた人やいろいろな付き合いのあった人、ひとりひとりに手紙を書くように書き綴ります。ただ、この手紙は、依頼事や謝礼、近況報告などの、報告や連絡、交流を深める純粋な手紙とは異なります。相対するその人が、自分にとってどんな人であったのかを自問自答することで、自分の存在理由を探します。その人との関係を見つめ直して、自分がどんな生き方をしたのかを明らかにします。

○自分にとっての真実とは

 手紙を綴る相手のその人と、いつごろ、どんな状況にあるときに、どんな付き合いがあったのか。その人と何をしたのかを、印象に残る逸話の中で確認します。そのときに、どのようなことを感じ、学んだのか。そして、いま、その人にいうべきことはどんなことか、その人に伝えたいことや感謝の思いを書きます。いまだからいえることもあるでしょう。いまだから気づくことも出てきます。謝りたいことや、讃えたいことがあるかもしれません。自分が思うままの、自分にとっての真実を書くようにします。

1.02. 自分史との違い

○自分中心の私小説的物語

 自分が、いつ、何をしてきたかの活動記録を書き綴るのが「自分史」なら、「報謝巡礼」は、自分が何を思ってきたかの、その折々の時代環境の中での心の遍歴を綴ります。そのときに会った人との逸話をもとに、思ったことや、いまにして思うことなど、思いを探して吐露する作業になります。相対する人と、自分との物語ともいえるでしょう。つまり、この「報謝巡礼」は、自分を主人公にした私小説のようなものです。限りなく事実に近いフィクションであり、そのためにも、イニシアル表記として実名表記は控えます。小説としての発表もよいでしょう。

○許される限界を慮る

 あくまでも、自分の主観の思いです。その人がどう思ったのかについては、自分の推測になります。相手も一緒に経験した出来事を、どう捉えていたのか、自分が捉えていた思いとは違うこともあるでしょう。明からさまにしたくないことや、そこまで書かないで、ということもあるかもしれません。自分なら許せることも、相手にとっては迷惑なことかもしれません。ただ、この「報謝巡礼」は、相対する人が隠しておきたいことを暴くものではありません。許される限界を思いやって、自分にとっての真実を綴るようにします。

1.03. どのように書くのか

○書きやすい方法で書く

 自分中心の物語といっても「報謝巡礼」は、文芸作品を目指すものではありません。自分の持っている言葉を使って、自分が書ける書き方で綴ります。それはビジネスの世界で、日常的に書いてきた「営業報告」などと変らない文章でかまいません。思いつくまま、すらすらと書きすすめるということができない、書き慣れない人にとっても書けるようにした方法で書き綴っていきます。字数を決めたワクに文章を埋めていくパズル風の作業です。ここではその書き方を「枠組みブロック構造作文」としておすすめしていきます。

○ステップで書きすすめる

 一気に書きすすめるのではなく、ステッブを設定して、順々に書いていきます。まず、最初に「報謝巡礼」の設計図をつくります。全体の企画、どんな人たちを巡礼するのかの計画を立てて、どのように構成するのかを決めます。「報謝巡礼」の全体像をつくり、それを構成する部分を、相対する人、ここでは巡礼先の札所を「章」として、いつまでに書くのかの目標を設定します。その目標に向って、その部分を細分化して、文章を重ねていきます。文章は、明解な表現で書くことを第一とします。

1.04. 発表のしかた

○本にして読んでもらう

 書いたらこれを私蔵するのではなく、他の人に読んでもらうのが「報謝巡礼」の原則です。本人の「思い」を文章にするのは、言いたいことを、確実に遺すためです。さらに、これを分りやすいカタチに定着させ、他の人に伝えることが「報謝巡礼」です。思いを言葉にして、それを文章というメディアにし、読む人に、いつでも任意の時間に、手紙として、思いを受けてもらう。そのための、次のメディアとしての「本」にします。書くことが目的ではなく、発表して読んでもらうことが目的です。

○本の部数は思いで決める

 「本」は、手書きの原稿ではなく、読みやすく加工したものにします。そのために、基本的に、文章をパソコン(ワープロ)で書くようにします。手書きの原稿は、デジタルデータ化しておきます。書きやすく、推敲しやすく、管理しやすく、いろいろに加工できる、などの利点があります。このデータを使って「本」にします。作る「報謝巡礼」の部数は、一部だけでよい、伴侶や子どもと孫の分でよいという人から、できる限り多くの人に読んでもらいたい人まで、その人の「思い」で決まります。

1.05. 報謝巡礼のHON

○パソコンでつくるHON

 いま、本づくりは、パソコンにの活用によって、かつてのように多額の費用をかけなくてもできるようになりました。出版社が編集して、印刷会社が印刷製本して、書籍取次店を経て、書店で陳列して販売するという流れが大きく変っています。昔から、書店で販売しない自費出版という方法がありましたが、それでも編集、印刷という工程は、専門家に頼っていました。それがパソコンによって、高度な専門知識や技術、印刷製本設備がなくてもできるようになりました。「報謝巡礼」は、新しい本づくりで行います。

○手づくりの新メディア

 「報謝巡礼」では「本」ではなく、「HON」をつくります。この「HON」とは、Handmade Original Newmediaとしました。「手づくりで、自分だけの、新しい伝達媒体」を作ることです。紙の出版(アナログ出版)や電子出版(デジタル出版)など、いろいろなHONのカタチがあり、この中から選んでもらいます。「報謝巡礼」は、大々的な広告を展開して、書店に陳列して、ベストセラーを狙うことを目的にしません。非商業出版であり、著作者の現在のパソコン環境でつくるHONづくりを実現します。

1.06. デジかアナか

○紙の出版(アナログ出版)

 従来本のように、紙に印刷して綴じて本にする方法です。一部だけの本から、数万部以上の本づくりに対応します。
・本格出版 
 オフセット印刷、オンデマンド印刷
 本格製本
・手づくり出版
 パソコンのプリンタ、コピー機、簡易オフ機、
 手づくり製本

○電子出版(デジタル出版)

 ITがもたらした新しい出版のカタチです。
その基本になるのが、原稿のデジタルデータです。
・インターネット配本(サイトに登録)
  既存のホームページ
  自分のホームページ
  ブログ
・メール送付
・デジタルメディア配本
  CD-ROM MO、FD 等

2. 報謝巡礼の企画

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報謝巡礼企画書

作成日   年   月   日(  )

著者
タイトル
サブタイトル 

◎What・目的…どんな価値をもつか

◎Who・主な対象者…どんなかかわりのひとか

◎Why・著作理由…なぜ、いまつくるのか

◎Where・執筆場所…どこで、どのように

◎When・執筆期限…いつまでに

◎How many…制作部数

◎How to…本の体裁・仕様

◎How much…費用

◎Tool&Skill…用具/技能

◎その他

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2.01. 巡礼先の選び方

○会いたい人を書き出す

 人は半世紀以上も生きてくると、親兄弟を含めて、それまでに会った人は、何百人以上にもなるでしょう。この中から、強く影響を受けた人、印象に残っている人、忘れられない人など、「報謝巡礼」で会う人を決めるようにします。このために、記憶をよみがえらせる糸口をつかむことが大切です。まず、自分の年表、履歴書をつくります。これを見ながら、子どもの頃から、つい最近までに、思い付くままに、会いたい人を、できるだけ多く書き出してみます。

○50人を選び、続柄で分ける

 書き出しているうちに、そのときに会った人たちが思い浮かんできます。この段階では、取捨選択をしないこと。50人以上になったら、今度は、特に会ってみたいと思う人に絞り込んでいきます。このときに、関係続柄として、身内、友人、同業、師匠、親戚、施主、仲間、故人の8つに分類します。施主とは、仕事の得意先やいろいろな場面でお世話になった人、仲間とは、いろいろな団体で一緒だった人とします。絞り込んだ50人を、関係続柄に分けてみます。特に、会いたい人を中心にして選んで、関係続柄別でバランスを取らなくても構いません。

2.02. 巡礼先に会う順序

○一里塚としての十番台

 次は、選んだ50人に会う順番を決めます。「報謝巡礼」は、興味を持って読んでもうために、全体をひとつの物語のように構成することがポイントです。逢う50人の配置を工夫します。旅のプランづくりです。50人に逢う長旅の途中で脱落しないで、元気に書きすすめていくためにも重要です。そのため、特に会いたい人を十人、二十人、三十人などの十番台に配置するようにします。こうすることによって、巡礼旅の一里塚になるものです。ここまで来たか、次は、あの人まで頑張っていこうという励みになります。

○旅のはじめは伴侶から

 「報謝巡礼」では、逢う人を「札所(ふだしょ)」とします。旅のはじめ出発点の「第一番札所」に、妻や夫、人生のパートナーである伴侶を選びます。人生第ニの誕生を共にした人に、改めて相対することで、自分の存在を確かめます。そして、最後の「第50番札所」に母親を選んでください。母親にもう一度逢うための旅が「報謝巡礼」です。全体の札所の配置は、出会った順の時系列にしないようにしますが、順番は、何かのつながりで決めるのもよいでしょう。どんなつながりなのか、読む人に考えてもらうのも楽しいものです。

2.03. 報謝巡礼の構成

○全体を巻・章・節で構成

 「報謝巡礼」は、これまでの人生で関わった50人を選んで、その人たちに、再び、紙上で相見える自伝エッセイです。逢う人、対象者を「札所」として、これを構成上の「章」とします。「第一番札所」を「第一章」とし、「第五十番札所」を、「第五十章」とします。また、10章ごとに区切って、一章から十章までを「その1」として、「その5」までつくり、それぞれに目次のページとして「扉」を挟み込みます。全体を、巻、章、扉、節というように構成して、巻頭に「はじめに」と、最後に「おわりに」をつけます。

○書きやすい文章構造

 それぞれの「札所」である「章」には、タイトルとして「札所番号」「対象者(巡礼先)」「続柄」「紹介短文(大見出し)」「遺言」をつけます。「章」は「節」で構成し、1つの章は、3節とします。それぞれの「節」は、5つの「項(プロック)」で構成します。また「節」には、小見出しをつけます。「項」の文章は、一定の範囲の長さ(字数)にしてください。このように、決まったカタチ(構造化)にして、文章を重ねるようにすることで、書きやすさや管理のしやすさを実現したのか「報謝巡礼」づくりです。

2.04. 続柄と紹介短文

○8種の関係続柄を表記

 巡礼先の50人を、イニシアルで表記してください。どんな関係続柄なのか、身内、友人、同業、師匠、親戚、施主、仲間、故人を明記します。身内は、伴侶と子ども、親、祖父母、兄弟までとします。友人は最近の親交がなくても友人とし、同業にはの同僚だけでなく、取引先の人たちも含めます。師匠は、学校の教師の他に、仕事や趣味などで師と仰ぐ人とし、施主には得意先やいろいろお世話になった人。仲間は趣味やいろいろな活動で一緒になった人です。身内や故人との関係は、紹介短文(寸言紹介)の中で紹介します。

○紹介短文が章の大見出し

 巡礼先のその人が、どんな人なのかを紹介短文(寸言紹介)で表記して、これを「章」の大見出し(章見出し)とします。この紹介文は、基本的に同じ字数、13文字とします。長くなったり、短くなったりしないように、言葉を選んだり、別の表現方法にしたり工夫して調整します。同じ字数になるように、いろいろ考えて挑戦するのも「報謝巡礼」づくりの楽しみのひとつです。「身内」「親戚」「故人」の紹介文の中に、「妻」「娘」「叔父」「友人」などの、関係を含めますので、その分、次数が少なくなります。

2.05. 伝え遺す言葉

○「遺言」で思いを伝える

 「報謝巡礼」は、50人の人たちに謝辞を伝えたり、この際に、改めていいたいことを伝えるもので、言葉の遺産を遺します。感謝の言葉、願いや言いたいこと、思い出の情景などを、簡潔に四字熟語の「遺言」にします。この四字熟語は、知られている既成の言葉にはとらわれません。既成の四字熟語の中に、最適なものがなかったら、新たに、造語としてつくってみます。まず、その人に、何を伝え遺したいのか、書き出します。それを換骨奪胎して、言葉を煮詰めて、四字熟語にする作業も、「報謝巡礼」づくりの楽しさです。

○「四字熟語」づくりの楽しさ

 私の「デジ還親父の百人巡礼」では、そのほとんどを造語にしてみました。妻に対しては「連舞来世」、古くからの友人には「永友談飲」、仕事のパートナーには「協策提案」、もう先に亡くなった父親には「会顔切望」、ふるさとで暮らす小学校の友には「鎮守統領」、古い恋人には「会者定離」、小学校の教師には「熱血追憶」、最初の弟子筋の友に「厚誼再進」、実弟には「相身互身」、職場演劇のプリマに「舞姫礼讃」という具合です。なんとなく、意味が伝わりそうな四字熟語の言葉をつくってみました。

2.06. 本文の節と項

○節は5項で構成する

 巡礼先の札所(章)には、3つの「節」をつくります。3つの「節」を、5つの「項」で構成するのが「報謝巡礼」のポイントで、これをここでは“ブロック構文”とよぶことにします。「項」は、文章のひと塊の段落です。その字数は、170〜200字にしてください。これは「報謝巡礼」の組版(レイアウト)として、最初に設定してあるA5判の版型のデザインから導きだした字数で、この範囲で文章を書いていきます。長くなったら不要な部分を削ったり、短かったら内容を膨らませるなどして、字数を合わせます。

○項は4〜5文でまとめる

 1項は、読みやすくするために、4〜5センテンス(文)で構成します。センテンスの文字数は、35〜40字とし、漢字は、全文字数の3分の1前後とします。難解な言葉や、特殊な専門用語を避けて、分りやすい言葉を選び、読点(、)は、心もち、多めに打つようにしてください。また、ここでは、ひとつの文では、ひとつの内容しか述べないこと。不必要な副詞、形容詞、接続詞は、できる限り使わないないようにします。このように文章を、項、節、章、巻と、レンガを組み上げていくように書きすすめていきます。

2.07. 小見出し

○内容を要約して表記

 「節」には、小見出しをつけます。つまり、ひとつの巡礼先、札所には、3本の小見出しがつくことになります。書いた内容を、まとめて一言で紹介する要約的なものです。従って、ひとつの節の内容を、広げ過ぎないようにします。抽象的な内容の表現ではなく、できるかぎり具体性のある記述にすることがポイントです。この小見出しの字数は、内容によっていろいろ異なってきますが、おおよそ20字以内とします。あまり短かすぎると、要約と言うよりも、表題的な、題目になってしまいがちです。

○小見出しの例

 私の「デジ還親父の百人巡礼」から例を紹介します。小中学校同級生のANさん「疎開先山形が私のふるさとです」「所詮、他所ものだったのでしょうか」「還りなん、いざ。私のふるさとに」。また、古い恋人のMHさんには「あなたのふるさとは変わっていました」「婚前の性がタブーの時代の幼い恋でした」「二人で山形の母の元に行きました」。ボスのNKさんには「あなたの豊富な人脈が仕事を集めた」「レジャーランドの再開発計画づくり」「三十年ほど前にグリーンツーリズムを先取り」つい読みたくなるようにしたつもりです。

2.08. 情報確認

○事実を故意に曲げない

 「報謝巡礼」が、本人が記憶していたことの記録です。対象者やその関係者の目にも触れるでしょう。そのためにも対象者をイニシアルで表記します。書く内容が本人にとって事実だとしても、勘違いもあります。名誉毀損などの訴訟問題に発展しないまでも、故意に事実を曲げてはなりません。用意できるかぎりの資料を調べたり、その人に確認したりすることも必要です。また、人によっては、思い出しても、憎しみが湧くこともあるでしょうが、節度ある客観的な表現をして、悪意の表現は、できる限り避けるようにします。

○用意できる資料を集める

 記憶を引き出す資料として、当時の写真や日記、手帳、手紙、年賀状、学校の卒業名簿や文集なども効果的です。また、その人について書いているときに、関連して、巡礼先(対象者)に選んでいる他の人についての逸話を思い出すことがあります。このときは、そのことを、メモ書きしておきます。「○○さんデータ」として、同じ文書内に書いておけば、後で移動や加工は簡単にできます。書き上げた後に、確認してもらえる人になら、内容を見てもらうのもよいでしょう。直す、直さないは、著作者の判断次第です。

(つづく)







2008/08/23 9:25:30|クラさんのWebセミナ
専門商品の販売戦術
 今日は専門商品の販売戦術、特に、販売力のパワーアップについて考えてみたいと思います。
 戦略と戦術とか、よくお聞きと思いますが、戦略と戦術はどう違うのかといいますと、戦略とは「いかなる敵と戦うか」ということであり、戦術とは「いかに敵と戦うか」ということで“敵と会ってからの戦い方”をいいます。つまり、販売戦術とは、お客さまとの接客技術ということになります。

「対人的能力」が基本

 まず、「対人的能力」が販売戦術の基本になるのではないか、この辺りからお話をすすめたいと思います。ビジネス行動科学では、管理者や経営者の能力には、物事を抽象的にとらえる能力と人とのコミュニケーションを図る能力、具体的な行動にうつすための能力の3つがあり、それぞれの立場で必要な能力の割合が違ってくるとしています。

 企業の最高責任者であるトップマネジメント、販売店でいうなら、経営者ですね、この人に最も必要な能力は、物事を抽象的にとらえる能力であり、次に人とのコミュニケーションを図る能力が必要だとされます。具体的な行動にうつすための能力については、さほど、その必要性を認めていません。
 
 これに対してトップに次ぐミドルマネジメント、販売店でいうなら店長さんでしょうか、この人に最も必要な能力とは、人とのコミュニケーシヨンをはかる能力であり、あと、物事を抽象的にとらえる能力と具体的な行動にうつす能力はその両方で人とのコミュニケーシヨンを図る能力と同程度にあればよいとしています。

 第一線の監督職、売場の責任者主任さんでしょうか、この人に最も必要な能力は、具体的な行動に移す能力です。次に必要な能力は人とのコミュニケーシヨンを図る能力であり、物事を抽象的にとらえる能力についてはさほど要求していません。

 このような職階別に必要な能力を見てみますと、どの職階にも同等に人とのコミュニケーシヨンを図る能力が、同じ比率で必要とされています。人とのコミュニケーシヨンを図る能力、つまり対人能力は、ビジネスのどの階層においても重要視される能力であり、これはセールスにおいても重要な能力であるのです。

 つまり対人能力を無視しては、これからのセールス活動は成立しません。どのように、相手と親しい人間関係をつくり得るのか。このテーマに挑戦するのが、ヒューマン・コミュニケーションによるセールス活動、ヒューマン・セールスです。

 セールスは、当り前のことを当り前に実行することで、成功の80%までを手中にできるといわれます。当り前のこととは、普通の人がすることと同じということであり、その意味では、セールスという活動は特別なものではありません。セールスマンは、一般のビジネスマンと同様に、対人関係をよくしていくのが条件です。そして、世の中の人間関係は、当り前な生活態度をきちんとできることを前提に築かれています。

 当り前な生活が人間関係の基本です。まず、早目に行動を開始するすること。このような人間は多くの人から認められます。そのためには早起きをすることです。朝寝坊の人間で生涯成功した人はいないとさえいわれています。また、オーナーが毎朝7時半までに出勤した会社で、倒産した会社はないというのが定説です。

 早起きは早い出勤や始業につながります。そして、その結果、時間的、精神的な余裕が生まれます。この余裕が仕事についての工夫を生み出し、努力につながり、信用、信頼につながるという図式です。早起きのためには、早く寝る習慣が必要です。また、当り前なことに生活の三原則があります。

 ひとつは“あいさつ”です。あいさつは人と人を結ぶ金の鎖です。発声を伴うので勇気を呼び、勇気が自信を引き出すものです。ふたつ目は“返事”。「ハイ」は拝啓の拝、敬うことで、相手を尊敬する、認めるという意味です。三つ目は、きちんとした“後仕末”をすること。汚れは“気枯れ”から来るものです。このような当り前なことを、毎日、毎日実践することだといわれています。

“自己実現”と“自己革新”

 成功とは“自己実現”を果し続けるプロセスです。“自己実現”とは、自分の現在の能力を120%発揮して、潜在能力を引き出して、“自己革新”をはかることです。多くの人は、成功という結果だけを期待し、そのために欠せない“自己革新”をはかる努力をしようとしないものです。この“自己革新”とは、自分を変えることです。変えるためには学ぶことであり、マネぶことであり、できる人のまねをする、こうなりたいという願望のことです。

 そんな願望を抱きながらも、達成できないのは、行動計画を具体的に作成し、実行していないからです。まず、具体的に何から始めるかの行動計画を決めます。大きなことをするには、とりあえず、小さく割って、できるところから始めるようにします。これが自己目標です。

 設定しても挫折してしまうのは、

1. 願望が心底からきているものではなく、なんとなく淡いものであったこと。途中で消えやすいものではなく、強烈で何が何でもこうしたいと思う願望であることです。
2. 願望は強くても、内心、自分はこんなことはできない、こんな人にはなれないと思っているため。疑っていてはダメで、自己を疑っているうちは、能力は少しも伸びません。
3. 計画が性急しすぎて実行不可能なもの。人がひとつの世界で一人前になれるのは、8〜10年はかかるものです。気長にかまえることも必要です。

 自己目標に集中し、反復継続しします。具体的な行動計画をあせらずにコツコツ実行すること。このような体験で、人は力をつけていきます。

 計画した目標を実行に移すには、単に、頭の中で考えているのではなく、はっきりと紙に書いて、自分と“契約書”を交すことです。おおげさのようですが、最初にきちんとしておかないと、いつの間にか、うやむやになってしまいかねません。この自分との契約書を“行動計画書”といいます。紙に書き出してみると、頭の中で考えていることがより正確に表現できるものです。

 そして、“行動計画書”に書いた計画を確実に実行するのだと、自他に向って宣言、誓うようにします。販売会議や朝礼など、集団の前で誓い宣言し、また、朝、起抜けに自分でつくった計画を自分に聴かせるようにはっきり声を出して読みあげることです。このように“自己暗示”をかけるのです。人はリラックスしている状態の方が、自己暗示がかかりやすいもの。ただ、一度や二度宣言しても、すぐには効果が出ないものです。3ヵ月から半年は続けることです。

目標の設定

 目標は、まず、年間目標を設定します。売上げをいくらにするかという数字での設定に加えて、行動目標を決めることが重要です。この一年間で自分と家族はどんなことをするのか。仕事と家庭のバランスがとれていないと、長い目で見た場合、うまくいかないものです。

 この年間目標にもとづいて、月間の目標を設定し、さらには週間、毎日の目標というように細かく決め込んでいきます。例えば、平均販売単価をどこまで上げられるか、月次目標としてどの価格まで売れるか、年次目標として有力客を何人つかまえられるかなどを、具体的に設定します。そして、これらの目標は、必ずフォローすること。グラフ化して達成進捗状況を自己管理します。

 セールス活動要が、売上げ高で評価される時代は終っています。現在では「どのくらいの金額を売り上げたか」ではなくて、「利益をどのくらい上げたか」が問われる時代です。つまり、売上げだけを考えるなら、大幅な値引きや高価な景品を付ければ、売れないことはありません。しかし、このようなセールスを続けていくと、利益がどんどん圧迫され、採算割れのセールスも余儀なくされる恐れがあります。これは正当なビジネスではありません。

 また、セールスという活動を担った人の努力を全く無視するもので、ヒューマン・セールスでもありません。自分の活動を合理的に分析し、効率的、かつ効果的に活動する必要があります。そのためにも、自分の接遇する上での特長を商品として考え、商品力を高める努力が必要です。
 
 お客さまにとっても、何かといえば、すぐディスカウントするとしかいえない、何の魅力もないセールスマンとは、長くつき合おうとはしないはずです。強く値引きを求められた場合には直接それに応じないで、たとえば、求められた値引き額相当程度の商品を付けたり、名刺にサインをして、次回のサービス券とするなど、アイデアしだいで、あなたという商品を高めることができます。

 そして、セールス活動は正当なビジネスであり、誠心誠意のセールス活動を実施する限り、それに見合った利益は当然要求する権利があります。販売活動で、きちんと利益を上げることで、セールス活動が正当に評価され、セールスマン、販売員の志気が上がり、誇りも保てます。

 これからのセールスは、単なる“売り込み”ではなく、相手の困っていること、相手の望んでいることを、自分の商品(サービス)によって、迅速に解決してあげることです。人は、だれもが現在の生活に100%満足していないものです。それぞれ何かの問題をかかえ、早く解決したいと考えています。人間とは、現状に満足せず、理想を求めながら現状との差を埋めようと努力しているものです。このような人を相手にするのがセールスであり、相手の問題解決のためにに協力する行為なのです。

 いままで、セールスの成果は、<訪問頻度>×<接触時間>、あるいは<接触件数>×<販売効率>であるとされていましたが、これからは、<問題解決の情報提供>が重要な因子になっています。相手がかかえている問題解決のための情報提供があって、はじめてセールス活動といえるのです。

 そのためには、まず、相手についての情報収集を的確に行ない、そのニーズやウォンツをつかまえなければなりません。お客さまのかかえる問題は、ますます多様化、個性化しています。それらに、キメ細かく対応するための個人情報を蓄積し、顧客カードなどでファイルしておくことです。

 お客さまの問題解決に協力してあげるためには、一度会ったお客さまは、必ず次回来店のときに名前を呼びかけられるよう、名刺にお客さまの似顔絵や特徴を記入するなど、名前と顔を覚えられる仕組を工夫する必要があります。つまり、セールス側の人間から、お客さまに近づく努力がなければ、お客さまの問題を知ることも、解決に協力してあげることもできません。

 そして、必要なときに瞬時に引き出せることが必要です。顧客に関する情報管理がますます求められる時代であり、これらの膨大な情報を瞬時に利用するためにコンピュータも広く活用されるようになってきました。

 個客対応のセールスを展開するためには、日頃から相手の身になって考える感情移入の能力が必要です。相手の立場に立って、自分の気持ちを相手の気持ちと同じにできる能力です。相手の気持ちがよく理解でき、しかも、問題点やそのときに因っていることがズバリわかって、的確に対処できる能力のことです。

 セールスマンには、この感情移入の他に、柔軟性の能力が必要です。この柔軟性とは、まさしく“個客対応”のできる、つまり、ひとりひとりの顧客の個性に対処できる能力のことです。

コミュニケーシヨン能力

 このような能力を養成するためには、まさしく、人とのコミュニケーシヨンを図る能力を追求することでしょう。日頃から温かく、やさしい人柄を養うことであり、相手の喜怒哀楽を自分のこととして共にできる思いやりを持つことです。

 このような顧客とのヒューマンな関係づくりは、これからますます必要になってきます。かつては、次から次へと新しい需要が生まれ、一過性の需要だけに対応していても、販売実績は上っていました。しかし、これからは一度出会った顧客には、何度でもお店を利用してもらえる固定顧客になってもらうようにしなければなりません。

 特に、最初の出会いは最も重要です。このときに、顧客の心をとらえ、自分の人となりを売り込むことが求められます。新しい永続的な人間関係を、この出会いからスタートさせることです。

 永続的なセールス活動を実施するためには、3つのRが必要です。

 第一番目のRは、リピート、Repeat、反復です。一人のお客さまと、できる限り長くおつき合いすること。お会いする回数を多くもつことです。たとえば、特別の目的がなくても、お宅を訪問したら心から歓迎され、茶菓の接待が受けられること。また、そのお客さまが、ふらりとお店に来られること。このような関係をもとに、商品をおすすめでき、反復してセールスが展開していきます。高額商品の購入客とのおつきあいのコツは、いかに商売に関係のない時間をつくれるかといわれるゆえんです。

 第二番目のRは、リファー、Refer 、紹介です。ひとりのご満足いただいたお客さまから、新しい有力見込顧客をご紹介いただくことです。「ぜひ、新しいお客さまをご紹介ください」とお願いしなくても、そこは以心伝心で、黙っていてもお客さまの方から紹介してくれるような関係づくりをすることです。

 第三番目のRは、ラポール、Rapport、心の交流です。お客さまとは、最初、売り手と買い手という関係からスタートするものであり、この関係を超えて、人と人との心の通った関係をつくるということ。もちろん、それぞれの立場は、いつまでも変えることはできません。
 
 売り手は、どんなに親しくしてもらっても、その立場を崩せないものです。売り手であることを徹底すること。つまり、真のプロになって、相手にプロとして接することです。このプロとは、ヒューマン・コミュニケーションのプロであり、また、扱い商品のあるすてきな生活を提案できるプロであるということです。

 ヒューマンセールスの基本は、相手との心の交流をはかることです。思いやりの心をもち、それを行動に表わすようにします。その重要な行動のひとつが、相手の話しを“聴く”門構えに耳の聞くではなく、聴診の聴、listenです。これは自然に耳に入る音声を、聞く、hearではありません。相手の話しに心を集中して耳を傾け、真剣に聴いて理解してあげることです。聴くことは、相手に対しての思いやりです。日頃から、“聴く”訓練をしておくことが大切です。

 お客さまにとって買い物、特に高額商品購入の楽しみは、自分のためにいかに時間や空間を使ってくれるか、そして、いかに自分の話を聴いてくれるかにあります。人は、一般に聴くことよりも、話すことを好みます。自分が好きなだけ話すことは快感を伴います。

 このような相手には、聴き手に徹した対応、つまり、聴き上手になることです。セールスという活動は、こちらが用意したことを話して伝えない限り成立しませんが、話しをこちらの主導のもとに進めていこうとあせると、応々にして、話の内容が十分に伝えきらないものです。

 “話し三分に、聴き七分”の場合は、相手が興にのって話します。相手が興味や関心をもっていることを、次々に話してくれます。普通では、願っても得られないほどの貴重な個客情報です。相手が話すことに、こちらも関心を寄せ、さらに、相手が喜んで答えてくれるように的確な質問をしていきます。相手の自己表現欲求を満してあげることで、心を大きく開いてくれます。質問をして、聴くという会話の中で、こちらが伝えたいことをちょっとでも話せば、相手もしっかり聴き、理解してくれるものです。

 また、3〜4度に1度くらいは、お客さまの話しの中から1つ、2つ話題を選んで、相手の負担にならないように、後日、あるいは電話でお尋ねすることも、コミュニケーションを深める方法です。

 相手の話しを心から聴くためには、それなりの行為が必要です。それは「あなたの話しを、聴いています」という信号を送り続けることです。

 信号の第一は“目”。「目は口ほどにものをいい」というように、心は目に表われます。自分では、相手の話しをよく聴いているつもりでも、目が聴いていないと、相手の気持ちはだんだん離れていってしまいます。そのために、相手に対して、瞳を真中にして、真正面にすえて聴く姿勢をとるようにします。白目を向けると、話しを拒絶しているように受けとられてしまいます。

 第二のポイントは、話しの途中でタイミングよく“うなずく”こと。このしぐさは、相手の話しを、十分に理解し、同感しながら聴いていますという信号です。話し手にとって対話の安定剤のようなもので、快く話しが進められます。

 第三は、さらに積極的な同意の信号で、上手に“あいづち”を打つことです。「なるほど」とか「そうですか」、あるいは「それはそれは」といったあいずちです。会話の促進剤的な役割りを果します。

 第四のポイントは、表情で受けとめるようにすることです。面白い話しだったら、面白そうに、悲しい話しなら同情して、めずらしい話しなら身を乗り出すようにと、話しを身体全体で聴くことです。少しオーバーなくらいがちょうどです。しかし、いずれの場合も、真意からの受け方であること。心にもない態度は、すぐアシがついてしまい、せっかくの努力が水泡に帰してしまいます。

 どのように話すかによっても、人間関係に大きな影響をおよぼします。同じことをいうのでも、肯定的な表現と否定的な表現があります。「きっとお気に召しますから、ぜひ、お使いください」というのが肯定的な表現で、「多分問題はありませんから、お使いになってもいいんじゃないですか」というのが否定的な表現です。同じことを伝えるのなら、相手を楽しくするような表現をとるようにしたいものです。

 また、まわりくどいい方もきらわれ、相手を滅入らせてしまいます。いつになったら本題に入るのか、せっかく聞く気になったのに、途中でいやになってしまうものです。いまの時代、軽快で、短く、明るいいい方でなければ聞いてくれません。

 まず、結論を先にいいます。その後で、結論に至るまでの経過を話します。必要に応じて、より細かに話すという組み達て方です。新聞の記事の要領で、見出しになる結論を先に伝えます。

 事実と自分の意見を区別して話します。事実は事実としてありのままを伝えます。自分の意見や他の人の意見であっても、それがひとつの考え方であることをことわってから伝えること。偏った意見の押し売りは、迷惑以外の何ものでもありません。

 とにかくセンテンスを短くすることです。ダラダラと長く、主語が何なのか分らなくなっては、意味が通じません。ひとつのセンテンスでは、ひとつのことを話すこと。文字数として、50字以内であることです。

 相手の話しを聴く場合、表情を加えた身体全体で受けとめると効果的なように、話すときも、身体全体を使うと、より効果的なコミュニケーションができます。相手の警戒心を解き、安心感を与え、心を開いてもらうためにも、必要なものです。といって、大げさなゼスチュアーをとり入れることではありません。

 全身を動員してのプレゼンテーションには、まず、全体の姿があります。これが“姿勢”です。モミ手をして、ペコペコ、ニヤニヤのお追従は、かえって相手に失礼です。姿勢は端正で謙虚であることが基本。いつも背筋をピンとはっていること。椅子に坐るときも、足や腕を組んだり、あまり深く坐りすぎないこと。もちろん、髪型や服装は見苦しくなく、清潔であることが条件です。

 次が“動作”。デキパキして、無駄のない、流れるような動きを身につけることです。日頃から、どのように動けば美しい動きになるのかを研究しておくようにします。同僚とお互いに動作をチェックし合うのも効果的です。

 表情は、顔全体が受けもつ好印象づくりのポイント。まず、明るく、健康的な笑顔が基本です。あいさつをするとき、笑顔を添えて、明るくするように心掛るようにします。相音の警戒心を解き、こちらに積極的に近づくようになります。いつも穴るい笑顔でいるためには、ものごとを明るく、楽しく考えて受けとめること。毎日毎日、出かける前に鏡の前で笑う練習をするようにします。

 人は、内心では商品を購入してもいいなと思いはじめていても、すぐには、なかなか承諾しないものです。たとえ、90%まで購入してもよいなと決心していても、そこから先が時間がかかります。このような迷いを救ってあげるのがセールスマンの仕事のひとつです。

 妻の同意が得られそうもない」、「ちょっとぜいたくすぎる」、「お金がない」、「もう少し考えてみたい」などなど、最後の決断を下さない理由があります。

 こんな言葉に出会ったら、まず、第一のポイントは、強引に説き伏さないことです。決して、袋小路に追込んだりしないこと。相手の立場で、対策を考え、アドバイスするようにします。場合によっては、しばらく時間をおくことも効果的です。相手の事情を無視して、こちらの勝手を押し通さないことがポイントです。

 お客さまによっては、半ば決心していても、反論してくる場合があります。自分自身で、十分に納得するためのプロセスです。こんな反論であっても、きちんと対応することが肝要です。そのためには、まず、反論を素直に聞きます。このとき、意見をはさまないこと。いう通りのままを聞きます。

 そして、全部、もう話すことがなくなったということを感じとったら、それらの反論のついて具体的な質問をします。相手を困らせる質問のための質問であってはなりません。気になっていることを、もう一度確認するための作業です。そして、購入の妨げになっている項目について、ひとつずつ、十分な話し合いを通して、解決のための策を練ります。

 説得ではなく、相談をすることで好意を売るようにします。

 購入することで、お客さまはセールスマンに急速に親しさを感ずるようになります。金額的に高額な商品を購入した場合は、なおさら、この気持ちが強くなります。このように状態になると、その顧客は固定顧客として、継続した購入や、新しいお客さまを紹介してくれたり、協力的になってくれます。

フォローアップ

 ただし、いつの場合もそうだとはいえません。“購入”は、お客さまがセールスマンと親しい人間関係になるための“きっかけ”でしかすぎず、その後、どのようなフォローアップをするかによって違ってきます。

 電話によるフォローアップをすることです。商品の購入の1ヵ月後、3ヵ月後、半年後、1年後…というひとつの区切りをきっかけに、商品についての様子伺いをします。このときに、いろいろな情報が収集できます。お客さまの誕生日、結婚記念日などに電話でお祝いを伝えるのも効果的です。

 ハガキや手紙によるフォローアップも有効です。電話の場合、直かに話しできますが、時間が合わなかったり、すれ違ったりすることも少なくありません。郵便なら、好きなときに読んでもらえますし、いまの時代、かえって新鮮な感じを与えます。ちょっとあいた時間に書くことができ、時間を有効に使えるものです。

 近頃では、インターネットのEメールでフォローするという方法が効果的に使われています。同じ文章が一瞬のうちに、大勢の人たちに送れるという便利さがありますが、全員に同じ内容という場合でも、お客さまひとりひとりのアドレスに送りたいものです。カーボンコピーで送付すると、受け取ったお客さまに、送った先のお客さまのアドレスが全て解ってしまいます。ブラインドコピーで送る配慮が必要です。

 お客さまを訪問してのフォローアップは、最も有効です。購入するまでは、なかなかあけてくれなかった玄関のドアも、購入後には大歓迎で迎えてくれます。近くまで来たから、会う目的だけの訪問が効果的です。

情報収集と活用

 つぎに、情報の収集と活用術について考えてみます。“知恵”を創り出すのが“情報”の活用法です。いま、情報の重要性が大きく叫ばれています。情報とは状況に応じた適切な判断を下したり、行動を取ったりするために必要な知識のことであり、また、情報化社会とは、情報内容を的確にとらえ利用する者が優位を占め、そうではない者は他におくれをとってしまう社会のことをいいます。

 このような高度情報化社会を乗り切るためには、情報マインドをもつ必要があります。

 情報マインドをもつとは、情報の大切さを十分に認識することです。情報は、どのように集めるかが大切ですが、どのように活用するかが大切です。何らかの目的を達成するために活用するものであり、また、個人や企業、組織がこれから採ろうとする行動を調整するために生かすものです。

 当然のことですが、情報それ自体が、何か問題を解決したり、企画を立てたり、予測をしてくれてりするものではありません。つまり、集めることに意味があるものではなく、いくら情報量があったとしても、それだけでは情報社会を乗り切れません。

 情報は、それを活用して、はじめて生きてきます。活用の方法はいろいろです。人によって、目的によって、違ってきますが、基本となるのは、偏った情報にふり回されないことです。いくつかの情報を加え、掛け合わせ、分析することで、新しい情報をつくり出すことです。これはいままでの情報の意味を超えたもので“知恵”とでも呼べるものです。

 つまり“知恵”をつくり出すのが情報を活用するということです。確かな仕事をする人は、“情報”の取り扱い方が上手です。いろいろな情報は、いま、あらゆる媒体を通して、バラまかれるといってよいほど出回っています。日常の業務の中で、情報を収集し、いつでも検索できるような体制づくりがポイントです。

 情報の取り扱い方を上手にするには、

1. その情報の目的やニーズをはっきりつかんでいること。
情報は、次の的確な行動のためのものです。何のための情報なのかをはっきりさせておくことです。

2. 情報がどこにあるのか、その所在をつかんでいること。
情報は、すぐ古くなって使えなくなるものが多いものです。最新の情報は,どこで入手できるのかを知っていることが必要です。

3. 情報を少しでも早くつかめるよう努力をしていること。
手あかのついた情報は、ほとんど役に立ちません。情報は新鮮であることが大きな条件です。少しでも早く入手するように習慣化しておきます。

4. 多くの情報の中から必要な情報をすぐ取り出せること。
目的を絞って集めた情報でも、活用するときは取捨選択する必要があります。必要な情報をすぐとり出せるようにすることも大切です。

 情報には、いろいろなものがあります。最も一般的にものは、マスメディアによる情報でしょう。新聞や雑誌から効果的に情報を集める場合は、

1. 新聞の場合、まず、見出しに目を通す。
新聞の見出しは、それだけでどんな記事なのかがわかります。見出しに目を通せば、必要な情報を簡単に選び出すことができます。全面を最初から見るのではなく、関心のある面、特に、注意 している領域の面から優先して見ていくことがポイントです。

2. 雑誌や単行本の場合は、ます、目次に目を通す。
目次には、各記事の新聞で見出しにあたるタイトルが出ています。これをザッと目を通し、必要な記事を選び出します。

3. 記事を傾め読みする。
必要と思われる記事を、たんねんに読めればよいのですが、なか なか時間がないものです。そのために、全体をざっと傾めに目を 走らせ、どんなことが載っているのかを、まず、つかんでから、 必要に応じて読むことです。

 テレビやラジオなども有力な情報源です。これらの電波メディアの場合、情報を自分で残しておかなければなれりません。せっかくの情報を、忘れてしまわないように、テレビやラジオの前などに、メモ用紙と必記用具を置いておくようにします。そして、すぐにもメモをする習慣をつけておくようにします。

 特に、有効に活用したい情報源は、インターネットです。調べたい情報のキーワードで、政府から企業団体、個人発信のサイトで、いろいろな情報を集めることができます。

 もっとも、内容は玉石混交で、それをどのように取捨選択するかがポイントになりますが、慣れればそう難しいものではありません。私は、インターネットからの情報とちょっとした裏づけの取材で、1時間のビデオのシナリオを書いたことがあります。

 情報源は他に、ヒトコミ、つまり人間コミュニケーション、ミニコミ、マチコミなどいろいろ数限りなくあります。情報源は、日頃から大切にしておきたいものです。

1.お得意先、お客さま。
 セールスの即、役に立ち顧客情報や個別の顧客情報が得られます。
2.取り引き先、同業者。
 業界情報や商品情報などが入手できます。
3.政府刊行物、各種調査機関。
 各種の公表データなどが手軽に入手できます。
4.各種セミナー
 内容そのものだけではなく、同じ出席者からの情報も得られます。
5.趣味の会
 趣味を通して、いろいろな分野の人椅と知りあえ、情報交換ができます。
6.街
 情報の豊庫です。通り、人、商店、劇場、などなど全てが対象です。
7.旅行
 特に、海外旅行などは絶好の情報収集のチヤンスです。

 いつでも欲しい情報が、電話一本で得られるように、人のネットワークをつくっておきます。学識経験者や専門家、評論家、ジャーナリストといったその分野の権威者には、直接アクセスしにくいものですが、その点インターネットは便利です。その道の専門家のサイトにアクセスでき、貴重な情報を得ることができます。

 社外の仲間同志の情報ネットワークもつくっておくといいですね。このとき自分を中心に情報をもらう中心として考えるのではなく、自分もネットワークの一員であり、自分の得意分野をもッていることも重要です。

 これからの時代のセールスマンとして、このようなヒトコミ・ネットワークをもっていることが成功のポイントになってきます。特に、情報を入手する立場としてではなく、提供する立場に立つことは、情報についての認識のしかたやその価値、要点などが見えるようになってくるものです。

 このネットワークで得られる情報は、マスコミなどで得られるものより鮮度が高く、また、詳細で、実用性の高いものです。個々に情報を入手するだけではなく、月に1〜2回、定期的に昼食会や例会などを持って、ひとつのテーマを話し合ったり、また、互いに講師になって体験発表会を行なったり、外部講師を招いて研修会を開くなどして、情報の交換を実施すれば、視野が大きく広がります。

 ヒトコミ・ネットワークづくりは、既成のグループに入れてもらう方法もありますが、できる限り自分たちでつくりたいものです。学生時代の同級生や仕事関係の知り合いなど、まず、小さなグループから始めるようにします。いわゆる、インフォーマルグループで、少しずつ人を増やして、大きな輪にしていきます。

 集めた情報は、必要なとき、すく使えるようにファィリングしておきます。そして、このファィルは、いつでも、すぐ役立てられるように、常にメンテナンスをしておくこと。

 そのためには、次のようにします。

○捨てる
不要になった情報まで大切に残していたのでは、たまりすぎて、必要な情報がすぐとり出せなくなってしまいます。不要になったと判断したら、思いきって捨てることも効果的に情報ファィリングのポインとです。

○まとめる
関連する情報は、まとめてひとつの情報としてファィリングするようにします。このときは、あくまでも情報を使う自分の判断を大事にすることです。

○あらわす
情報に表札をつける作業です。どんな資料、情報であるのかがひと目でわかるようにすること。テーマやキーワードで表現します。

○並べる
情報には、自分なりに順序づけておきます。時々、並び替えが必要かを考えてみます。

 自分が集めた情報は、あくまでも自分のために使ってこそのものです。従って、情報の主人は、自分であり、独断的であっても何ら支障はありません。


それでは情報を活用する5つのポイントを紹介します。

1.計画立案
いろいろなアイデアを生み出して、ひとつのプランにまとめあげます。情報と情報を組み合わせてみると、新しいアイデアが生まれるものです。

2.問題解決
セールスはもちろんビジネス、個人生活の大部分は、問題の解決のための活動です。情報により、解決の先例やヒントを得るようにします

3. 予測
これから先どうなるのか、それに対応してどうすればよいのかを考える交業です。そのために過去と、現在についての情報を基本になるものです。

4. 意思決定
さまざまな計画案や解決案の中かにら、その長所や短所を勘案しながら、これはと思うものを選ぶ作業で、その判断材料として情報が役立ちます。

5. 結果の検討
計画の実施、問題の解決、予測の結果、意思の決定など、作業を検討するためにも情報を活用します。もし、意図したとおりにいかなければ、再び、ふり出しに戻って、新たな情報によっての検討が必要になってきます。

 効果的なセールス活動には、“コ客”情報が欠せません。この“コ”とは、お客さまの一般名称である“顧客”としての“お客さま”と、個々のお客さまについての“個客”とがあります。

 お客さま全体の顧客情報とは、消費者、生活者全般についての情報です。全体としてどのようにトレンドがあるのかなど、市場の平均値のデータです。この収集方法については、いままでに見てきた通りです。

 これに対して、個々のお客さまの個客情報とは、ひとりととりのお客さまについての情報です。この情報がなければ、高額・高級商品の販売は不可能といってもよいほど重要な情報です。これは自分でコツコツと収集しなければなりません。

そのための方法としては、

1. ご本人から聞き出す
最も手っとり早い方法です。もちろん、直接質問することもあり ますが、いろいろな機会や会話の中から、必要な情報をピックッ プしたり、会話や動作から推察するなどして集めるものです。大 部分はこの方法で集められますが、主観的な情報であり、お客さ まご自身やお身内の方からは直接聞けない情報もあります。

2. 周辺の人から収集する
ご王人から聞き出せない情報は、当然、他の人からということになります。同じ会社の人、友人、親戚、また、隣り近所の人などいろいろです。興信所ではありません。さりげなく、何げなく、気づかれずに、がポイントです。

 “個客”情報として必要な項目は、次のとおりです。ここでのポイントは、家族単位ではなく、個人単位の情報であることで、家族間については、個人間の関係を明らかにするようにします。

●基本項目:
氏名/旧姓(夫人など)/住所(郵便番号)/電話番号/住居形態(持ち家か、敷地建物の面積は、木造か、部屋数は、築後年数)/現住所での居住年数/前居住地と転入理由(夫人なら、実家の住所)/生年月日/学歴(学校名・専攻・卒業年)/職歴/年収/資産/その他、特記事項

●現在の職業:
会社名/住所・電話/代表者名/業種/創業年/資本金/年商/従業員数/入社年月日/現在の所属部課と役職/役職
  ※本人が生徒・学生の場合:学校名/学校所在地/専攻/入学年月日

●家族関係:
既婚・未婚/結婚年月日/初婚・再婚/挙式会場/家族構成

●趣味・嗜好その他: 
趣味/嗜好/運転免許内容・次回更新年月/所有自動車名/所属団体・クラブ(スポーツ関係も)・入会年月日・役職

●販売ヒストリー(商品ごとに): 
商品名・品目・数量/販売年月日/販売価格/支払方法(割賦の場合は、最終支払年月日)/販売方法(店頭、訪問、展示会など)/購入目的(自己使用、家族使用、贈物用)/購入動機(何をきっかけに)/販売担当者/提供した特典

 個人に対してアプローチするためには、お客さま個人の“人生”そのものをしっかり把握し、アップ・ツー・デートな情報の収集が必要です。顧客管理ではなく、個々のお客さまの“個客”管理であり、個客情報を収集としたら、その情報をパソコンでファィリングして“個客”へアプローチがしやすいように管理をします。ときどき、新しい情報を入手した段階で、メンテナンスをすることがポイントです。

 この“個客”管理とは、
・より詳しい個人情報が収集、記載されていること。
・家族単位ではなく、個人単位に管理されていること。
・登録してある“個客”同志の関係が記載されていること。
・販売ヒストリーが、より具体的に記録されていること。
・最新の個人情報が、随時、記載できるようになっていること。

 といっても、販売店の全顧客を対象にする必要はありません。高額プレステージ商品を購入できる、または、できそうな顧客層に限って、“個客”管理の対象とします。この意味で、現在の顧客台帳を否定するものではなく、補完する関係にあります。

 もちろん、個人の価値観が多様化している現在、対象外としたお客さまがプレステージ商品を購入することもあります。これらのお客さまの個人個人に対して、「個客ファィル」を作成します。形式はどんなものでも構いませんが、必要項目を記載できる個人ごとのファィルとします。また、コンピュータを活用できれば、それに超したことはありません。








2008/08/20 18:23:48|クラさんのWebセミナ
専門商品の販売戦略その2
(つづき)

違いの戦略

 そして、“違いの戦略”を打ち出します。時代や市場が持つ指標にもとづき、「自店は他店とどこが違うのか」といった自分の長所や短所の確認から始めていきます。主に、長所はどんなところかを確認するもので、それをさらに伸ばすようにします。この作業は、自信づくりにも役立ちます。

 長所の確認は、次の3つの方法で行います。
1.自己評価として、自分が自分に抱いている長所、たとえば品揃えが豊富。絶対の自信をもっているもので、他の評価と比較する基準になるものです。
2.顧客評価として、顧客が評価してくれる長所たとえば、店員が親切。自分たちでは、過少評価しかしていなかった点などが見つかることがあります。
3.第三者が評価してくれる長所、たとえば、ベテラン店員が多い。利害関係がないと、活動や顧客との関係が素直に見えてくるものです。

 いま必要なのは、視点を自分の外に向ける“差別化戦略”ではなく、自分の内側に向けるこの“違いの戦略”です。いままでなら考えられないような企業が、異分野に進出したり、店舗販売だけだったお店が、外販に力を入れ始める、などといったこともこの現われです。

 このように、業種・業態が常に流動化して、一体、どの会社が競争相手なのかが見えにくく、競合他社の姿を明確にとらえられない時代では、それまでの業界内だけを見て、同業他との差別化をしてもあまり意味がありません。自店の強みをはっきりと把握し、DMやチラシなどで積極的にアピールしていくことが必要です。

 「自店を他店とどう違わせていくか」を考えるとき、他店より一歩進んだ、あるいは、踏み込んだ姿勢を築いていくことが、最重要点になりますう。それは、大げさな言い方かもしれませんが、「正統派の奥義を極める」という表現で示されるような、ひとりひとりの心くばりにつきます。

 たとえば、特別に奇妙な試みでお客さまを引きつけようとしても、一時的でごく小さな効果しかもたらせず、場合によっては、ソッポを向かれることも覚悟しなくてはなりません。しかし、日常会話や人の気持ちに素直に受け入れられる部分で、少しずつのプラスを積み重ねていくことは、常にメリットを生み出しながら、大きな成功につながります。

 「一歩進んだ配慮」とは、次にあげるような気配りを指すものと考えてください。

1.いつ、どんな状態に置かれても、頭の中にお客さまの存在を意識すること。自分に旅行をする機会があったとき、重要なお客さまに必ずお土産を持ち帰る、など。

2.「一人より二人」と、より広がりのある気配りを意識すること。ご主人が来店したとき、奥様の服装のセンスの良さをあげ「やはり、ご主人の影響ですね」とほめる、など。

3.時と場合を考え、対応に最も適切な状況を選ぶように考える。女性客と街中で会ったときには、その服装を覚えておき、後日、来店時にほめる、など。

 日頃の対応にプラスアルファの心配りが、他店に大きな差をつけるというわけです。

相手に何を伝えるのか

 次に、販売技術について考えてみます。まず、お客さまに対して、どのような話し方をするのか。セールス活動とは、コミュニケーション活動です。ここでのコミュニケーションは、主として“ことば”によって行なわれます。そして、“ことば”によって、ある商品やサービスを販売するという目的を達成しなければなりません。こちらが相手に伝えたいことを的確に伝えて、相手の気持ちをこちらの考え方に同調してもらわなければなりません。

 ときどき「口のうまい販売員」、「あのセールスマンは話が上手でねえ」などということがいわれます。これは決してホメ言葉ではないようです。「口先だけでお客をマルメ込もうとする」という非難の気持ちが込められています。たしかに、かつて、売りつけてしまえば、後は野となれヤマとなれ式の考え方で、ベラベラまくしたてて買わせてしまうセールスをする人もいました。そして、このようなセールスマンがヤリ手として称賛されていました。もちろん、いまの時代、このようなことが通用するはずはありません。

 まず、「相手に何を伝えるのか」をはっきりさせることが、セールストークを考えるスタートです。セールス活動で、相手に伝えたいこととは何でしょうか。高級品の場合、自分の扱い商品について、それを購入した場合、どのような利便や恩恵を受けるのかということがひとつと、もっと大事なことは、自分がお客さまのことをどのくらい考え、一生懸命になっているかということを、相手の負担にならないぎりぎりまで伝えることです。

 いまの時代、何といっても人の気持、あるいは、人そのものが高品位な商品として評価されているのですから。セールストークを考える場合、その第一歩として、まず、自分のお客さまについて十分な知識を持つことです。これであらためて相手のことを認識するということです。ここで確認した内容を、商品と結びつけて「話す」ことになるわけですが、どの点について、どのような表現を使い、どのように順序だてて話したらよいのかを考えなければなりません。

 基本的には、相手の魅力を自分がどう評価しているか、どういう言葉で表現するかを考えておくことです。そして、その魅力がどの商品と結びついたとき、最大に発揮されるかを相手の言葉で準備すること。ただし、相手によって、話す内容が違ってきますし、また、話す場所にふさわしい内容や表現があります。話す場所がお店なのか、顧客のお宅なのか、展示会場なのかなどの場所によっても変わってきます。

 そのために、話し方の組み立てを、あらかじめ考えておいても、実際にはその通りにならない場合が多いものです。しかし、だからといって話す順序だてを用意しなくてもいいという理由にはなりません。標準的な順序を決めておき、また、今までの経験から、代表的な顧客について、2〜3例を考えておくようにします。相手がどのように反応してくるのだろうかということを想定して、その対応を考えておきます。これをできる限り文章化しておくようにします。セールストークの“シナリオ化”です。
 
 販売員であるあなたが出演するドラマの台本づくりです。これを実際の場で、いろいろアレンジするようにします。

 セールストークを組み立てるためには、どのような順序で話すことが、最も、相手の理解を得られるかを考えることが重要です。際限なく話す時間はなく、限られた時間しかありません。また、場合によっては初めて人に話すことだってあります。

 なによりも、わかりやすいこと。このわかりやすさとは、表現のしかただけではなく、どんな順序で話すかによっても違ってくるものです。しかも、相手が耳を傾けたくなるような魅力があることも求められます。

内容は5W1H

 話しの内容は、たとえば、5W1Hでまとめます。まず、初めての顧客には、自分が何ものであるか、Whoを印象づけます。顔なじみのお客さまや、再度のおすすめなどでは省略してよいものです。本題は、次からです。

 お客さまの魅力を商品やサービスを通じていかに引き出すかといった目的を伝えます。

 お客さまに対して何をしようとしているのか、Whatであり、ここは自分の、あるいは、お店の内容を伝える最も重要な部分です。そして、自分の特長がどこにあるのか、どのように役立つのかを説明し、納得してもらいます、Howですね。

 そして、なぜ、この商品なりを用意しているのか、Whyを伝えます。これは、あなたのこのような魅力のためにあるのだ、ということを伝えるわけです。そして、最後は、おすすめする商品が、どんな場所、Whereで、どのようなときや場合、Whenに役立つのか、あるいは、お客さまの魅力がどのように引き出されるのかを伝えます。

 情報伝達の手段として“話す”ためには、まず、明瞭な音声でなければなりません。といっても、アナウンサーのように、きちんとした共通語でなければならないというわけではありません。ナマリがひどかったり、口の中でゴチャゴチャ何をいっているのかわからないような、相手に不快感を与えるようなものであってはなりません。

 それどころか、この話しのやりとりを通して、相手の自分に対する好意と親近感をつくり、育てていくことが求められるのです。セールスマンの発声方法は、耳ざわりな点や、聞きとりにくい話し方を直すという方向で考えます。

 話し方で最も大切なことは“上手に聴く”ということです。「話し上手は聴き上手」といわれるように、上手に聴くことは、上手に話すことの重要なポイントです。話すという行為は、相手があってこそ成立するコミュニケーションです。一方通行的なものではなく、相互的なものであり「話せば、聞き、伝わったかどうかを確かめる」ことを、お互いで確かめ合いながら行う共同作業です。

 また、話す場合に機能しているのは口だけではありません。「目は口ほどにモノをいい」であり、表情や身振り、手振りが、話しの内容をより立体的なものにし、また、カラフルなものにして、効果的なコミュニケーションをつくります。服装や身だしなみ、清潔感も忘れてはならないチェックポイントです。そして、最後にセールストークの効果を支える、最大の要素が、話し手の自信と人柄です。

 たとえば、高額商品をおすすめするには、単に、売り手と買い手といった関係ではなく、それ以上の、人間的な交流をも含めた信頼関係がない限り、販売関係は成立しないものです。そのセールストークは、自信と人柄が裏打ちされたものであることが、絶対といってもよいほどの条件となります。

 自信とは、まず、相手の魅力を発見し、評価し、思いやることができるということです。次に、お店のイメージを含めての“商品に対する自信”があります。高品質で、しかも高付加価値の商品であることに自信をもつことです。そして、この商品をおすすめして、購入してもらうことによってこのようなプラスがあるということを信じることです。

 このように信じ、相手のことを心から考えるセールストークになれば、その心が、表情や身振り、手振りに表われます。話すことばを超えて、真意が確実に伝わるものです。このような話し方をすれば、相手も真剣に耳をかたむけてくれます。

 セールストークは、相手の立場に立って考えること、自信をもっておすすめすることで、段々、上手になっていくものです。もちろん、いろいろな工夫をこらすなど努力は欠かせません。場数を踏むことも、セールストークを磨くことにつながります。

 セールストークは「おしゃべり」ではありません。先天的な素質は、ないよりあった方がいいに決まってはいますが、それは「おしゃべり」の資質ではなく、心で語ることのできる資質です。そして、それは努力によって高められます。

 アプローチとは、「接近」を意味する英語です。したがって、セールスにおいては、買い手に接近し、商談の糸口をつかむ話術・トークを意味します。高額商品のアプローチは、販売員の方が売り手と買い手という立場を超えて、お客さまのために最大限の努力を惜しまないという姿勢と意思を具体的な言葉と態度で示すことです。「私どもは、あなたの意思を尊重しますし、いつでも注目していますよ」と表明するわけです。

 一般に、新人のセールスマンが実際の販売活動を開始したとき、最初にぶつかる壁はこのアプローチ話法である、といわれています。ほとんどの場合、セールスとは、初対面の人間同志の間で行われることが多いものです。常連などの例外はありますが、それでも、2人の間に商品を置き、売り手と買い手というそれぞれの立場に分かれて話しをすすめるとすれば、“なあなあ”の会話は成立しません。

 逆に、警戒心で凝り固まったギクシャクした会話も避けるべきです。そこで求められるのが、アプローチ話法です。買い手側の“人見知り”を解消するための最初の潤滑油、と考えればよいでしょう。

 スムーズなセールスを展開していくためには、簡単かつ明瞭で、相手によい印象を与えるようなアプローチ話法を身につけることが必要不可欠です。特に、高額商品においては、話し方も重要ですが、接遇のしかたや身ぶりなどの態度も重要なポイントになります。売る、という行為の前に、まず、お客さまの生活を知り、より豊かに、快適に生活にするために相談させていただくという姿勢が必要です。

 アプローチは、セールス時に、相手との間で最初に行われるコミュニケーションです。最初という表現で分類されるからには、本題、まとめなどの後の過程もあり、この後の過程にいかにスムーズにセールスをつなげられるかが、アプローチにかかっています。

 では、このアプローチ話法では、どのくらいの時間で、何を、どう話せばよいのでしょうか。アプローチは、あくまでも話の枕です。延々30分もアプローチをつづける人はまず、いませんが、すでにその時点でセールスに失敗しているといえるでしょう。時間にして約20秒が目安です。「20秒で何が話せるか」と思う人は、実際に20秒間話してみると、その長さがよくわかります。この20秒間で、セールスの成功・失敗が決まるのです。

 お店に来るお客さまの目的は、簡単に分けると次の4つです。品物を買いに来る。品物を選びに来る。情報を集めに来る。話しを聞いてもらいに来る。ただし、品物を返しに来る、クレームをいいに来るということもありますが、特別な例ということで別にして、まず、アプローチの20秒は、お客さまの様子やお話しを聴きながら、お客さまの来店がどんな目的なのかを判断して、その後の対応を準備するための時間です。

 つまり、お客さまの目的に合わせて、喜んでお迎えしますよ、という、あいずちを送る時間なのです。相手から、好印象を得るためのさりげないコミュニケーションとして「いらっしゃいませ」や「こんにちは」につづく、スムーズな20秒間を実現できれば、アプローチは成功したといえます。

 アプローチ話法は、買い手側の“人見知り”を解消するための最初の潤滑油といいました。ここで、ちょっと創造力を膨らませてみてください。もし、あなたが街中で見知らぬ人と会話するようなとき、何をもって潤滑油とするでしょうか。きっと、「相手の人柄」や「共通した楽しい話題」がその役目を果たすはずです。この「相手の人柄」や「共通した楽しい話題」が、セールスのアプローチ話法においては、「あなたの印象」と「商品の印象」に置きかわるわけです。

 店頭販売などで、商品に興味のありそうな買い手がいるとします。そんな場合、あなたが、あらためて表面に出る必要はさほどありません。まず、商品に対して、好印象を付加できるようなアプローチ話法が大切になってきます。商品の第一印象で勝負するわけです。逆に、訪問販売などで、あまり商品への興味を示さない相手の場合、あなた自身の印象が重要になってきます。

 笑顔の爽やかさ、とか、誠実で信用できる、といった印象が、相手の購買意欲を高めていきます。ただし、どちらの場合にも、やりすぎや押し込みすぎは、感心できません。印象は、感情的なものですから、話せば話すほどよいという性質のものではないからです。

 このように、アプローチでは、相手の心理や興味の対象を把握しながら、人と商品の印象をうまく連動させ、押し引きのタイミングをはかりながら、話をすすめていくことが、大きなポイントになります。

 店頭販売の場合、ある意味では、「いらっしゃいませ」の一言でアプローチがすんでしまっていると考えられなくもありません。たしかに、訪問販売と違い、相手は、ある程度、商品への興味や購買意欲が高まったからこそ来店したのであり、あらためて注意を引く必要がないように思うかもしれません。

店頭販売のアプローチ

 では、店頭販売において、アプローチは不要なのでしょうか。そうではありません。相手の関心や購買意欲を発酵させるためには、やはり、アプローチは必要不可欠です。ここで、店頭販売アプローチの要点を考えてみましょう。

1.誠意をつくした気持ちのよい「いらっしゃいませ」
 やはり、店頭販売のアプローチのカギは、この「いらっしゃいませ」の一言にあります。

2.ふさわしい商品を選びだすことのできる顧客知識
 二度目のお客さまなら名前で呼べるぐらいの顧客管理と、初めてのお客さまでも、だいたいの検討をつけられる程度の客層分析が求められます。

3.要領よく商品を説明できる十分な商品知識
 買い手の信頼できる相談役として、商品の勉強を怠らないことが、アプローチの一つの姿勢です。

4.来客との信頼関係を高める沈黙も必要
 店頭販売では、沈黙が非常に大切です。買い手に自然な空間を感じさせることができれば、こんなに素晴らしいアプローチはありません。

5.忠実なサーバント、しもべとしての姿勢
 不必要に自分からでしゃばらず、いわれたときにはすぐにかけつける姿勢が必要です。
 
 セールスの基本は、買い手の気持ちを尊重しながら、ともに利益を上げることにあります。しかし、断られたときに、なすすべなくあきらめてしまうセールスマンが、少なくありません。本来セールスとは、反対意見を前提に展開するものなのです。

 「セールスは、断られてから始まる」という有名なことばがあります。これは、“買い手の購買意欲は、疑問や否定から生じ、高まっていく”ということを端的に表したことばですが、その実践方法を知らなければ、意味を知っているだけで終わってしまいます。反対意見を上手に処理して、商談成立に結びつけていくには、まず、買い手の心理状態を正確に把握し、それに応じた話法を身につける必要があります。

 まず、反対意見や疑問の奥にある、買い手の心理状態は、どのようなものかを考えてみましょう。

1.買わされそうだという警戒心がはたらいている。
2.もったいぶって、条件を有利にしたい。
3.商品の内容をより具体的に知りたいという好奇心がわいてきている。
4.商品、またはセールスマンのどちらか一方だけが気にいらない。
5.他に購入商品が決まっていたが、この商品にもメリットを見出そうとしている。

 他にも、いろいろなことが考えられますが、こうして挙げてみると、お話し次第では何とかなるものが少なくありません。変にゴマカシにかかったり、返答につまったりしないようにゆとりをもって、応酬話法に取り組むことで、解決可能なことが多いのです。

 代表的な標準応酬話法のいくつかを、次に紹介しましょう。
1.イエス・バット法
相手の意見を聞いてから、こちらの説明を行い、納得させる方法です。「なるほど、おっしゃるとおりです。しかし…」とつづけ、実例や商品そのものを使って、応酬します。
2.ブーメラン法
「さすがに目が肥えてらっしゃいますね。この商品をお買上げになる方は、皆さま、お目が高く、いつも、感心させられております…」と、否定意見を自分の中で転換させて、売り手側のペースをつくりだします。
3.聞き流し法
「そうですか…。ところで、あの調度品は素晴らしいですね…」など、たいした根拠のない意見を聞き流し、新たな話題からペースをつくり出す方法。経験と判断力が必要です。
4.質問法
「ローンの件がお気にかかるのでしょうか?それでしたら…」などと、的を得た質問を売り手側から行い、具体的な商談の進展を図る方法です。

 標準応酬話法を利用する前に、注意点が一つ。応酬話法は、あくまで商談のスムーズな展開のための話法です。決して、相手をやり込めるためのものではありません。くれぐれも笑顔を忘れずに、また、適度に利用して、商談を成功させましょう。

 買い手との商談にあたるとき、何の障害もなく、スムーズに話がまとまる場合というのは、10件に1件もないでしょう。ほとんどの高額商品の販売の場合、お客さまは商談を有利に進めようとして、あの手、この手でやってきます。

 日頃鍛えたアプローチ話法で、何とかキッカケをつくりだし、いざ、商談開始となっても、反対意見や疑問、拒絶のことばばかりで、どうにも“とりつくしま”のない相手も、大勢の中には必らず存在します。こんなときは、「今後のために」勇気ある撤退を決断することも大切です。

 問題は、反対意見や疑問に、手応えが感じられる相手の場合です。たとえば、「高いからねェ」などというとき、「高いから買う気が起こらないよ」と否定されているとは、思えない場合があります。「商品は、確かに素晴らしいから、何とか、したいけれど…」が本心ではないでしょうか。こんなパターンも、まちがいなくあるはずなのです。要するに、否定のすべてが、本当の否定ではないということです。

 人間は、不思議な生き物です。内面の不安を、たいてい否定形のことばとして、口に出します。「あいつはイヤな奴だ」と、不満をいう人間の気持ちの中には、「それでも、何とかうまくやっていきたい。どうすればいいだろう」という気持ちもあるわけで、「決心の理由づけやキッカケが欲しい」という気持ちを表している場合が、多いのです。

 しかし、反対意見は、内心どうであろうとやはり反対意見です。応酬話法が、万能でないことも事実です。経験をつんで、応酬話法のTPOをものにしてください。

 最後に、売場づくりと外商としての訪問販売の基本についてお話したいと思います。

 まず、売場づくりは、エキサイティングな売り場にすることです。そのために、

1.すぐ目につくこと。わかりやすいことです。
ショーケースやショーケース上の空間、あるいは、床のじゅうたんなど大きな変化が効果的です。また、明るい、あるいは、落ちついているなどの空間的な変化も必要です。

2.アピールがわかりやすいこと。表現内容と方法です。
お店の主張をどのように表現するのかの技術。どの商品を特におすすめする商品として扱っているのか商品群として陳列します。ショーカードなどでのフォローも必要です。

3.迫力があること。高品質感です。
高級品ではゴチャゴチャするような陳列は、かえってマイナス効果的です。什器やディスプレィの素材や使い方で"質"の迫力を出すようにします。

4.美しい、楽しいこと。照明、演出です。
見ているだけで、その商品の魅力が伝ってくるように、照明を当て、商品の素材感やフォルムが効果的に見えるように商品の配列を整えたり、質感の高い演出小物などを使用します。

5.選びやすい。配置です。
同一テーマの商品をグループ化したり、素材あるいは価格など、お店の陳列の法則を明確にすることです。

 また、高価格、プレステージ商品は差別化して陳列するかが重要なポイントになります。特に、一般品と明らかな差別化をはかって、アピール度合が高くなるように、高い付加価値をもつ陳列を工夫します。そのために

1.ゆったり空間的な贅沢さを出す
当然ですが、一定面積当りの陳列量は、一般品よりも少なくなります。高級品の陳列は、ぎっしりと詰った感じを避けて、ゆったりと、ひとつひとつの化性を大事にしながら、空間的に贅沢に感じるようにします。

2.素材感を強調する明るい照明
陳列商品の照明は一般品に比らべて明るくなるようにします。白熱灯やスポットを多用するなどして、一般品とは明らかに違うことを表現し、また、素材感や仕上感を強調するようにします。

3.質感の高い什器を選ぶ
使用する什器やディスプレィなど、質感の高いものを使用することで、さらに、差別化を強調することができます。一般品と同じ什器を使わずに、専用の別なものにします。

4.価格表示を明確にする
お客さまが、納得した上で「見せて」といえるようにするためにも、価格表示をはっきり見えるようにしておきます。

 さらに、選びやすいように、秩序を持たせて美しく並べることもポイントです。美しく、選びやすくなって、購入意欲を強く刺激するものです。そのためには、まず、商品を似かよったグループに分けます。どのようにグループ分をするのかによっても、お店の個性や特性を生かすことができ、これが商品に付加価値をつけるものです。

●素材で分ける 
●性別で分ける 
●デザインで分ける 
●その他、シリーズ別などで分ける方法など
があり、グループは、適度に空間を保って並べます。

 商品は決めた所にあり、違うグループにまぎれこんだりしていないかを確かめます。全体の秩序をくずすと鮮度が下ります。

 また、商品同志が重り合うような陳列は極力さけます。量感は必要ですが、高級感をこわさないようにします。POP広告に誤りがないかをチェックします。週に1度、POPを交換します。開店前に商品の乱れを直し、出し入れのしやすさをチェックします。近くから見るだけではなく、離れたところからの顧客の目での検討もするようにします。

 商品が売れたら、残りの商品グループの陳列を直します。すぐ、商品補充の手続をして、販売機会を逃さないようにします。そして、歯抜け、まだら陳列にならないように、グループごとに並らべ直しをします。そのままだと残りもの、古いものという印象を与え、鮮度を落します。定番商品が売れたら、同じ品番の商品、または、同じグループの商品を補充します。売れる商品は、それなりのワケがあります。

ショーイング

 次に、シーズンに合わせたショーイングを考えます。店頭は、ひとつのコミュニケーション媒体として見ると、シーズン性の強いテーマは、お客さまをスムーズに商品に導く効果があります。季節によって大きく需要量が違ってくるという商品ではなくても、ショーイングという意味から、シーズン性を上手に、上品に演出することで、はっとするような新鮮さを出すことができます。

シーズナル・テーマとしては、次のようなものがあります。
●1月
 「新年」 心、あらたに、いま、新世界に。
●2〜4月
 「新社会人」「昇進・栄転」 新しい衣が、私の証明。
●5〜6月/9〜10月
 「婚約・結婚」「結婚記念日」「叙勲」 華やぎ、最良々の今日。

 商品まわりに小道具などを使って、季節感やニーズ関連の演出でイメージアップをはかって、お店の個性を表現します。小道具を使えば、季節感の演出やニーズを強調するのに役立ちます。基本的には、クレドール製の小道具をご使用ください。

 高額な高級品を扱う専門店だからといって、商品まわりのPOP広告は不要であるということにはなりません。要は、商品にふさわしいデザインや素材のPOP広告を活用することです。間違っても、商品イメージを大きくそこなうようなものは使用しないこと。ふさわしいPOP広告によって、お客さまとの出会いの場を、さらにエキサイティングなものにできるのです。

 まず、コーナーに「誘導」し、「案内」して、購入を促すための「説明」のPOPが必要です。
●コーナーへ誘導するPOP
店内の雰囲気を壊さない程度に、大きく、目立つものにし ます。
●売り場はここですと案内するPOP
コーナーの雰囲気を構成する要素になっています。それなりの デザインや材質の質の高さが求められます。
●用途などを提案し、購入を促すPOP
主役である商品を際立たせる脇役です。商品とのコーディネイトが求められます。

 プライスカードの数字は、見やすく、大きく、桁の見間違いのないようにします。どんなPOP広告でも、お客さまの立場に立って工夫することは、陳列のポイントと一緒で重要なことです。

 お得意さまへの外商としての訪問販売活動では、そのときに持参する商品の点数や品種は、購入動機に大きな影響をおよぼします。見本の商品2〜3品に、プラス、カタログでは売れません。店頭でのアプローチ以上に、じっくり現物を見てもらい、実際に腕につけてもらって、買う気を刺激する絶好の機会です。

 そのために、まず、商品点数はその顧客におすすめしようとする提案テーマ、たとえば、銀婚式のペアウオッチとか、結納のお返しなど、で、3テーマ以上、3品以上が基本です。顧客の好みを十分に知った上で、おすすめするデザインバリエーションで3つ以上、それぞれおすすめする商品価格の上2ランク、合計3ランクの商品を用意します。

 これらの用意する商品は、設定した見込み顧客の提案理由によって絞り込んだものであり、数軒の顧客を次々に訪問する場合には、一部、ダブルことはあっても、その数に見合って数の商品が必要です。数は多いにこしたことはありませんが、多く持っていくと、迷いが出る上、もっと見たいという気になるものです。その場で、手渡しできる商品であることです。

 このような一般的な方法論では、お教えする立場でのコンサルティングと変わりません。本来なら、ひとつひとつのお店にあわせた解決方法があるわけですが、これは私のビジネスとして、対応させていただきたいと。あくまでも、うちの店ではどうするかが課題であり、機会がありましたら、ご一緒に考え、解決策を見つけて、実践するパートナー、コラボレーターとしてお手伝いできますことを願っております。

 ご清聴、ありがとうございました。