●レポート09
あってはほしくない哀しみに備えて 福生ボランティア連絡協議会
ボランティア要請に的確に応える
あってはほしくないことですが、福生市が、あの阪神淡路大震災なみの多摩直下型地震M7・3(福生市では震度6弱が想定)程度の大地震におそわれたらどうなるのでしよう。
人的被害では死者5人、重軽傷者304人、自宅外避難者が1日後に3,536人、1カ月後には2,950人もの被害に見舞われると予測されています。(総務部総務課・福生市防災マップより)市当局は、この万一の事能心に備えて、おこたいりない体制を整えています。ただ、このような残酷な状況下にあっても、私たちは生き延びなければなれりません。家族は生活を続けなければなりません。
福生ボランティア連絡協議会(略称・ボラ協 会長/秋山美左江 会員23団体570名)では、阪神淡路大地震の鮮烈な記憶が風化しかけようとしていた3年後の平成 年、市民ボランティアとして、大震災等の災害に遭ったらどんなことができるのか、しなければならないのかが、会の重要な課題になリました。
ボラ協に所属するグループは、社会的弱者とされる障がい者や高齢者の日常生活支援・核家族での子育て相談・在留外国人の日本語指導・環境美化活動・福祉施設への慰問や各種作業協力等、市民ボランティアとして多彩な活動を行ってきました。
ボラ協は、活動を行うグループが相互に助け合い、協力し合うことにより、それぞれの活動をさらに推進することを目的にしています。グループ同志の意見交換・情報交換や交流の場として、それぞれの活動を推進するための協力、共同活動の企画・学習の実施、活動の充実、推進に必要な連絡調整などを実践しています。
そして、福生市民にはすっかりお馴染みの、福祉まつりや福祉バザーには欠かせないメンバーとして、その企画や運営に総力を挙げて取り組んでいます。福生社協と緊密に連携しながら、各団体や施設からのボランティア要請、に応えています。 いろいろなボランティア要請に対して、人数や能力・資質にあわせて即座に対応できるネットワークは、活動歴一七年余の実績のたまものでしょう。ボランティア活動の現場を知悉していること、そこにはどんな作業があり、どの点に注意しなければならないのかのツボ所をおさえています。
そして、そんな活動に最適な人材を選んで手配する。その活動を通してボランティアの新人を指導する。グループの垣根を越えで対応できる体制は、単なる人数あわせにはないよさがあります。福生ボラ協ならではの活動が高く評価される所以でしょう。
段取りのよさと素早い対応力には、みごとなものがあります。たとえば、当日の朝、午後の早い時間に、決められた予昇で、野外で100人分の食事が求められるとします。グループの代表で構成される運営委員貝会のメンバが中心になって、献立が決められ、必要で過不足ない食材や調理器具・食器類が揃えられ、手際よく調理配食・後片付けまで時間通りに、流れるように作業がすすめられます。
それでいてお座なりではない、心のこもった食事か提供でき、幼児や高齢者・障がい者への配慮もおこたりない。卓上のプランではない実践活動がボラ協総合力の真骨頂です。
日頃の備えで憂いなし
福生が大震災に見舞われたら、ボラ協として何をすべきなのか。その日のために備えるために、まず、リーダーの研修をしようと。そんな折に、福生市在住の個人災害ボランティア・作家の角田四郎さんとの出会いがありました。阪神淡路大震災で家族ぐるみで被害者の生活支援のボランティアを実践し、活動領域を日本だけではなく、海外にも広げている人です。(現在「ブルーシート」として、ボラ協のメンバー)災害リーダー研修会の相談をしたら、一日や短期間の研修では訓練にならない、数日をかけた訓練にすべきではないかというアドバイスがありました。
阪神淡路大震災から3年、平成10年5月10日(日)から14日(木)まで、4泊5日の「福生ボランティア連絡協議会・災害リーダー研修会」を実施。被災してから生きる原点としての生活を人間らしく営み、助け合い、励ましあい、復旧作業に参加しながら、社会生活に復帰することを体験として学び、非常事態におけるリーダーの能力を高めることを狙いとした研修会でした。
市や消防署、社会福祉協議会等に協力を要鐘絹し、角田氏の指導のもとに、日ごとにテーマを設けて、途中からでも参加しやすいようにして実施、延べ400名の参加がありました。
この研修会の成果を機に、同様の訓練を、もっと広く、一般市民も体験できる機会をという声が高まり、実行委員会「ボランティア防災会議・FUSSA」を発足させることになりました。
そして、平成10年8月28日(金)から9月2日(水)の5泊6日、市民にも広く呼びかけて、多摩川中央公園で「災害宿泊避難訓練」を実施。想定外の台風4号による大雨の中でのスタートでしたが、延べ761名の参加がありました。ボラ協としても率先参加し、日頃の活動を通して学んだことを存分に活かすことができ、新たな知恵や技術を身につけました。
以来「中学生による1泊体験学習」や2泊3日の冬季災害宿泊避難訓練」、2泊3日「2001!夏アウトドア体験ボランティア」など、対象を広げた訓練や、災害時の水の確保に欠かせない市内の古井戸の調査などを実施。そんな中、平成16年10月、新潟中越地震が発生。個人ボランティアとして現地での支援活動に入っていた角田氏から支援協力依頼がありました。ボラ協はそれに応じ、訓練体験を生かした実際の被災地、小千谷市での避難生活支援を実施。被災生活の生活支援を、より有効なものにする生きたノウハウを身につけることができました。 会長の秋山さんは、幾多の活動や多くの人たちとの出会いで得た知恵や技術、そして、何よりも基本である「思いやりの心」を、次代の人たちにしっかりと伝えたい。そして「これから福祉関係だけでなく、教育・文化・環境など地域の団体としっかりと手を繋いで、福生社協のバックアップや行政・各種団体のご指導・ご協力によリ、真の地域福祉へ進んでいきたい。仲間ひとり一人のボランティア活動の質を高め、どんなボランティアの要請にも応えられるように、より一層の研鑽を積んでいきます」と決意を語ってくれました。
08年(平成20年)01月20日発行号 |