第千九百七十回目の作品として織悦の袋帯を紹介します。 タイトルは「芝垣秋草尽」です。
白地に琳派の秋草としておなじみのモチーフを並べた意匠です。モチーフ自体が魅力的とはいうものの、そのモチーフをほぼ等間隔に並べただけですし、色もきれいですが、織悦のレギュラーメンバーとも言うべき色たちで、特にひねりを加えたものでもありません。
それでも帯として眺めてみると、なぜか都会的で洗練されているように見えます。不思議ですよね、織悦さまの御威光でしょうか。それとも、本当にセンスが良いのでしょうか。
写真のいちばん上は帯の幅を写真の幅として撮ったもの、写真2番目と3番目は近接、4番目は裏側です。
改めて見てみれば、「琳派の秋草を等間隔に並べただけ」というのが間違いなんですね。実際に琳派の画家たちによって描かれた秋草、夏草など草花の屏風を見てみれば、それぞれももっと写生的な花の付き方をしていますし、草花どうしはもっと自然に重なっています。
こういう草花を見ると、呉服屋さんとしては、すぐに琳派の写しと思ってしまいますが、じつは織物にする時点で図案としてかなり整理されているようです。草の生え方も花の数や位置も、理想的なバランスになるように再構成されているんですね。
ついでにいえば色もただきれいな色を並べただけでなく、良く計算され、整理されて使われています。同じ青色が萩の葉になったり撫子の花になったり、菊の花弁や花芯になったりしているのですが、全く不自然には感じません。織物としての制約もあるのでしょうが、人間の目がちょうど疲れない程度の色数でもあるんでしょうね。
こうしてみると、都会的な洗練も計算の結果としてつくられたものなんだなあと感じます。
4番目の写真は、本金の平金糸で織られた芝垣部分の裏地の耳です。私は西陣の織物の価値を判断しなくてはいけないときは、手掛かりとして、とりあえず引き箔をチェックします。 |